10・ハロウィンパーティー

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* ソワソワしながら迎えた、約束の土曜日。 俺は午前中にデパートへ行き、持っていく用の菓子を買った。 侑弥くんはフレンチが得意だし、ケーキを用意するといっていた。 そしてハロウィンの菓子といったら、大抵甘い洋菓子だ。 ということは、他に呼ばれている人たちは、ほぼそういうのを持ってくると考えていいだろう。 そこで俺は変化球で、ジャックオーランタンの焼き印を押された、せんべいを買ってみた。 個包装だし、賞味期限も長いから、その場で食べきれなくても大丈夫! という、俺なりに配慮したチョイス。 美味いかは分からないが、デパ地下のだし、食べられないほど不味いってことはないだろう。 そして昼飯を食った後、ジムへ行き軽く汗を流してからシャワーを浴び、服を着替える。 シャツは、このハロウィンパーティー用に買った新品だ。 サプライズ的に仮装して行くのもアリか? とも思ったが、侑弥くんにドン引きされる可能性を考え、やめておくことにした。 約束の十八時にまにあうよう、余裕を持って家を出る。 九月下旬から十月上旬にかけて台風が三つほどきた後、気温は一気に夏から秋へ変わった。 暖房も冷房もつけずに済む、短い快適期間。 太陽は少し前に沈んでしまったので薄暗いが、外へ出ただけで暑さで瀕死になっていたころに比べたら、こっちのデメリットの方が千倍くらいマシ。 自宅から侑弥くん家へ行くためには、電車に乗る必要があるため、俺は歩いて駅へと向かう。 ――俺以外、誰が来るんだろう? 侑弥くん、友達少ないって言ってたけど、やっぱ俳優仲間とか舞台関係者かなぁ? 誘われてから今日に至るまで、侑弥くんから俺以外に誰が参加するのか、それについての連絡は受けていない。 別にこの間、彼と連絡をとっていなかったわけではない。 俺からは何となく、聞けなかった。 だってその……俳優仲間を呼ぶことを期待しているように誤解されたら、嫌だなって思って。 ミーハーな奴だと思われたくなくって。 それに事前に教えてくれないってことは、サプライズ的人物かもしれないし。 あ! だから別に他の芸能人は期待してねぇって! 俺の推しは侑弥くんだけだから! 【侑弥くん家の最寄り駅につきました】 ディアマリン最近(サイチカ)駅の改札を出たところで、俺は侑弥くんへLINEを送る。 お好み焼き後、侑弥くんと俺は二回、リアルで会っている。 俺から誘った鉄板焼きの店でと、侑弥くんから誘われたイタ飯屋でと。 (ちなみにこのイタ飯屋で、萌葱真琴(もえぎまこと)と偶然遭遇してめちゃくちゃ驚いた) ……改めて考えてみると、かなりの頻度で会ってんな。 俺と侑弥くん、マジで友達かよ。 今さらだけど、ファンの俺が推しとこんなにも親しくなっていいのか? ヤバイ。疑問系で思っているのに、ニヤニヤしてしまう。 歩きながら一人でキモい笑顔浮かべてるとか、俺ってば不審者じゃねぇか。 俺はニヤつく自身の顔へ軽く平手を入れてから、ディアマリンのエレベーターへ乗り、とうとうたどり着いてしまった506号室のインターフォンを押す。
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