10・ハロウィンパーティー

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「いらっしゃいませ、真伍くん。さ、上がって」 ワイン色のYシャツを腕捲りして着ている侑弥くんが、玄関扉を開けてくれる。 あぁー、今日のお召し物も大変お似合いで、とっても素敵ですぅー! 「お、おじゃまします……」 俺が侑弥くんの家へ入るのは今回で三度目だが、相変わらずドキドキする。 いや、ご自宅におじゃませずとも、侑弥くんと会うたび、その美しいご尊顔と優しい声音に、常にドキドキしているのだが。 「他の人はまだ来てないんですね。俺が一番のりか」 以前、アイスコーヒーとティラミスを振る舞ってもらった、リビングへ入る。 軽くだが、ハロウィンぽい飾り付けがしてある。 ――うっわ、俺のバカ!! 「手伝えることあったら何でも言って下さい」と伝えるの、忘れてたな?! パーティーの準備、侑弥くんに全部任せきりにしちゃったじゃん! もっと気を回せよ、俺のボケェ! いっぺん死んで来い! 最低! 「あ、言ってなかったっけ? ごめん、他に誘った人には全員断られちゃって、今日は僕と真伍くんだけなんだ」 「えっ?!」 驚きの事実に、俺は自己嫌悪しているどころじゃなくなる。 えっ、えっ、えっ……?! ということは――推しと二人きり?! これまでに三回、二人で飯行ってるけど……他の客や店員とかがいないから……本当の本当に二人きりじゃん?! 「ごめんね。みんな忙しいらしくって……」 侑弥くんが申し訳なさげにうつ向く。 「だ、大丈夫です! 侑弥くんと二人きりでハロパできるとか、光栄以外の何ものでもないですからっ! むしろ神様ありがとうございますー! みたいな?!」 んん? ちょっと待て、俺。言葉盛りすぎたか? もしこれが女性相手だったら、「ラッキースケベありがとう!」みたいな感じの言葉に、聞こえなくもない……?! 「あのっ、神様ありがとうっていうのには変な意味はなくて――」 「うん、分かってるよ。よかった。二人でハロパ楽しもうね」 慌ててフォローを入れようとした俺へ、顔を上げた侑弥くんがにこりと笑いかけてきた。 ぎゃー!笑顔がまぶしいー! 浄化されて消えてしまうー! 「あ、あの……これ、お菓子です」 俺はまぶしい時にやるように、手で目にひさしを作りながら、デパ地下で買った菓子の袋を差し出す。
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