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「ありがとう。何が入ってるのかな?」
「ハロウィン仕様のせんべいと、ワインです」
「お酒まで持ってきてくれたんだ。ありがとう。あ、おせんべいのラッピング可愛い。――ふふ、お菓子もらっちゃったから、イタズラできないね」
「へ?」
「残念。なんてね」
俺が手土産忘れたら、イタズラするつもりだったの?!
ハッ!
ひょっとして俺は、『推しからのイタズラ』というご褒美を、逃してしまったのか?!
「ワインは白か。僕は赤用意してたから、バランスいいね。あ、ビールと缶チューハイも買ってあるから、好きなの飲んで」
酒があまり得意でない、酔うと眠くなるタイプの侑弥くんは、アルコール度低めの缶チューハイ。
俺はまずはビールで、一週間以上早い、二人ぼっちのハロウィンパーティーをはじめることにした。
「これ……もしかして、侑弥くんの手作りだったりします?」
「もしかしなくても、全部そうだよ」
「全部! うっわ、マジっすか! スッゲ! どれも美味しそうで、どれから箸つけるかめちゃくちゃ迷います!」
四人がけのダイニングテーブルの上には、色とりどりの食欲をそそる料理が、ところ狭しと並べられている。
「二人しかいないわけだし、迷わず好きなだけ全種類食べたらいいよ」
「それ分かってても、悩みます。俺の腹は有限なのに、全部本当にうまそうだから……」
「ふふ、誉めてくれてありがとう」
以前のティラミスもだが、さすが昔フレンチ店で働いていただけある。
本当に全部、フレンチの一流店で出て来そうな料理しかない。
こんな立派で高そうなの、手土産代だけで食べていいのか?
しかも推しの手料理という、三ツ星レストランでの食事以上に価値があるものだったりするし。
「さ、早く。冷めないうちに食べちゃって」
しかしここで俺が財布を取り出したなら、侑弥くんは確実にドン引くだろう。
仕方ない。次に外で一緒に食事する時、侑弥くんの食事代を払わせてもらうということで、ごちそうになろう。
あ、帰り際に「材料費です」と言って、万札を渡すのもありか?
「うーん、そうだなぁ……じゃぁ、まずはこれから!」
悩んだ挙げ句、俺は分厚い牛ステーキにソースがかかったもの(料理名なんて分かるわけないだろ!)を一切れ小皿へとり、口へ運ぶ。
「うっま! 何これ、めちゃ柔らかいし、肉もソースもたまらんほど美味しいっすよ、侑弥くん!」
「本当に? よかった!」
「こんな美味しい飯作れるなんて、侑弥くんマジ天才! 将来侑弥くんと結婚する人は、世界一の幸せ者ですよー!」
「なら、もし真伍くんが僕と結婚したら、真伍くんは世界一の幸せ者になるってこと?」
?!
もう一切れ、と皿へフォークをのばした俺の身体が固まる。
「……ぇ、あ…っ、そ、そりゃそうですよ! 俺でも誰でも侑弥くんと結婚したら、宇宙一のラッキーマンですよ! 当たり前なこと聞かないで下さいよー!」
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