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アハハハハー! と、俺は大袈裟に笑い、おどけた感じで返す。
ちょっとぉー! ラブコメ漫画のフラグみたいなことを、推しに言われたんですけどぉーー?!
「そっかぁ、よかったぁ。――なんてね。誉めすぎだよ」
内心動揺しまくりな俺に気づくことなく、侑弥くんは自分の取り皿に、平然とサラダを盛り付ける。
……うん、分かってます。
ただの冗談ですよね。
当たり前に、本気なわけがない。
俺たちは推しとファンで、なおかつ男同士なわけだから。
侑弥くんがゲイやバイという噂なんて、聞いたこともないし。
でも推しに「僕と結婚したら〜」なんて自分へ向けて言われたら、誰でもビックリして挙動不審になるってもんでしょ。
「いやいやいや! 誉め言葉がいくらあっても足りないくらい、ガチで美味しいですもん!」
「僕の料理、気に入ってもらえて嬉しいな」
侑弥くんは、それまでサラダへと向けていた顔を俺へ向け、聞いてきた。
「ねぇ真伍くん、舞台に立つ僕と僕の手作り料理、どっちが好き?」
「え?」
侑弥くんはずっとニコニコしていて、声音は軽く雰囲気も明るいまま。
だけどこの質問に、俺はわずかな湿度を感じた。
しかし爪の先ほどの、このじめついた違和感が何であるかが分からず、それ故に言葉にすることもできなかった。
「えぇー? そんな、選べませんよ! どっちも最高ですもん! 最高&最高で比べらないっす!」
だから、気づかないふりをした。
「ふふ、真伍くんは誉め上手だね。頑張って作ったかいがあったよ」
「マジのガチで美味しいから、俺はただ事実を言ってるだけですよ! ――あっ、こっちのサラダも美味しい! ドレッシング激うまっ!」
「気に入ったなら、レシピ教えようか?」
「教えてもらえるんですか?!」
「それくらいお安いご用だよ。後でLINEにレシピ送っておくね」
そう言い、侑弥くんは缶チューハイを飲む。
そんな他愛ない仕草でも絵になる彼に見蕩れ、違和感の件は俺の意識外へ追いやられた。
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