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11・この気持ちは
飲んで食べてはしゃいで――あっという間に時間はすぎて、二十二時半。
俺と侑弥くんはリビングにあるソファーへ座り、テレビドラマを見ながら酒を飲んでいた。
映っているのは、男女バディのミステリードラマだ。
「侑弥くんも近い将来、こんな風にテレビに出たりする予定あったりします?」
「さぁどうかな。――メジャーな場に出たい役者は山ほどいるし、そう簡単じゃないよ」
「でも侑弥くんは演技も歌も、ダンスだって上手だから、採用側が放っておかないと思うんだけどなぁ〜」
俳優の実力だけで役がとれるわけじゃないことは知っているが、それでも……と俺が食い下がった時だった。
「――あっ、同僚から電話だ。何の用だろ? ちょっと席外しますね」
ローテーブルの上へ置いていた俺のスマホが震え、久保田からの電話の着信を伝えてきた。
奴がプライベートな用でかけてくることは滅多にないので、仕事のことだろう。
面倒くせぇな、推しといる時にかけてくんなや。無視するか?
と思いつつも、俺は「すみません」と言い、スマホを持ってソファーから立ち上がる。
「大変だね」
そう言ってくれた侑弥くんへ軽く頭を下げてから、リビングの戸を開けて廊下へ出る。
そしてきちんと戸を閉めたあと、俺は画面を指でスライドし、電話に出た。
「もしもし? どうしたよ?」
久保田からの電話の内容は、明日奴が休むにあたっての仕事の引き継ぎだった。
だから久保田とは五分以内に通話が終わったのだが……その後、大変面倒臭いことが起きた。
同僚からの電話を切った直後、母親が電話をかけてきたのだ。
「そういやしばらく実家帰ってなかったな」と、軽い気持ちで出たら、どうでもいい小言を二十分以上も聞かされるハメになってしまった!
俺が通話ボタンをオンにするなり、母親は怒濤の勢いで話しはじめ、最低一時間はしゃべるつもりだろう気配をしょっぱなから感じさせた。
だからこれでもめちゃくちゃ頑張り、できる限り手短に電話を終わらせたのだが……。
三十分近くも一人にしてしまい、侑弥くんゴメンナサイッ!!
「長々電話してしまってすみません! 会社の奴の次に親が――」
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