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12・ガチ恋と炎上(前編)
俺が寝込みを襲って侑弥くんへキスをしてから、約三週間後の月曜日。
シフト表の通り会社を休んだ俺は昼近くに起き、洗濯機を回しながら、朝食兼昼食の袋ラーメン(味噌味)を茹でるため、鍋にお湯を沸かしていた。
「……今日さみぃな」
もう十一月も中旬で、今が昼間といっても、男の一人暮らしの台所の床は、素足で立ち続けるには少々冷たい。
「どうしたもんかなぁ……」
寒くてつい一人言をつぶやいてしまったついでに、ボヤいてみる。
推しにとって自分が軽蔑すべき害悪野郎だと発覚して以降、ずっと俺は悩み続けている。
推しに己の罪を告白するかどうかを。
普通に考えたら、俺は侑弥くんに経緯を説明し、謝るべき。
そして『二度とあなたに近寄りません』と誓約書を書き、ソシャゲのフレンドも解除、電話番号もメモリから消し、LINEもブロックしてもらうべき。
俺は彼との友情を、最悪な形で裏切ったのだから。
しかし――卑怯な考えなのだろうが、侑弥くんが知らなければ、侑弥くんの中では『ない』ことだ。
寝込みを襲ってキスしました!と、俺が土下座謝罪告白するのは自己満足で、自分が楽になりたいだけなのでは?
侑弥くんにとってあの一瞬は、一生知らされない方がいい事実なのでは?
とも思うのだ。
………分かってる。ちゃんと分かってるよ!
罪を告白しなくていいよう、もっともらしい理由を並べたてているだけだって!
でも……本当に怖いんだ。
自分がやらかしたことを伝え、侑弥くんに嫌悪と軽蔑、そして失望の目を向けられるのが。
彼のファンミーティングに参加できなくなるのが、彼が出演する舞台を見に行けなくなるのが、怖い。
推しを、侑弥くんを失いたくない。
片思い相手と、こんな形でお別れしたくない。
全部、自業自得だと分かっていても……。
たくさん貢ぐから、黙っているのをどうか許して欲しい。
気持ち悪いだろう俺からの片思いは、心の奥底に押し込め、なかったことにするよう頑張るから許して下さい。
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