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13・ガチ恋と炎上(後編)
夕飯は冷凍食品のチャーハンをチンして、野菜ジュースを飲んだ。
その後はやけ酒する気力すらなく、コップにはお湯だけ入れ、俺はソファーに倒れ込み、まぶたを閉じた。
次に俺が目をあけた時、掛け時計は九時半を差しており、いつの間にかうたた寝してしまったことに、ため息がでた。
――もうこんな時間かよ。そろそろ風呂入んなきゃな。
今日は買い物へ行こうと思ってたのに、推しの熱愛疑惑報道のせいでそれどころじゃなかったわ。
……侑弥くんは今、どこで何をしているんだろう?
事務所に呼び出されて説教されてるのかな?
それとも自宅で謹慎中だったり?
ハロウィンパーティー以降、俺が生侑弥くんに会ったのは、タッパーを返すついでに飯を食った時の一回のみだ。
本当はその一回すら、会いたくなかったんだけど。
寝込みを襲ってキスした後ろ暗さから、タッパーを返す数分すら顔をあわせたくなかった――というか、あわせる顔がなかったから。
だから俺は、『洗ったタッパー袋に入れて玄関ノブにかけときますね』とLINEした。
しかし侑弥くんからの返信は、『返してくれる時にまた飯いこうよ? 忙しい? ダメ?』で。
上手い言い訳が思い浮かばなくて、俺はこの誘いを断れなかった。
ほとんど毎日のようにしていたLINEは、俺から侑弥くんへ送る頻度を下げた。
仕事が忙しいだの、両親や友達がアレコレ言ってきて忙しいだのと嘘をついて。
自分が完全な厄介ファンへ堕ちてしまう前に、友人色を薄め、ただのファンへ戻ろうと思ったのだ。
残念だしつらくて悲しいけど、このまま彼と友達でい続けたら、また俺は過ちを犯す気がしてならなくて。
……今、ディアマリンに行ったら会えないかな?
あの報道って本当なの? と聞きたい。
――いやいや! そんなの迷惑だしダメだから!
俺は一般人のただのファンで、彼は芸能人で推しなんだぞ!
あーぁ、俺もイケメンだったらなぁ。
そしたら俺も芸能人になれて、今侑弥くんの側に普通にいられたかもしれないのに? なぁんてねー……。
妄想がすぎる考えに、ちょっと笑ってしまった時だった。
頭上へ転がしていたスマホが震え、ブーブーうるさく鳴った。
「……誰だよ」
眉間にシワを寄せてスマホを取り上げ、顔の前に持ってくれば――
「侑弥くん?!」
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