13・ガチ恋と炎上(後編)

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俺はソファーから飛び起き、手の中で振動を続けるスマホを凝視する。 着信を知らせてくる画面には間違いなく、『侑弥くん』と表示されている。 え、え、え、どうしよう、出ても大丈夫? 出るべき? どうしよう?! ――ああもう! 何とでもなれ! 出るぞっ!! 震える指で画面をスライドし、息を止め、スマホを耳へあてる。 『――あっ、真伍くん? 話したいことがあるんだけど、今電話いいかな?』 普段よりちょっと早口な、慌てたような侑弥くんの声。 「は、はいっ。平気っす!」 一方俺は、動揺と緊張で若干声が裏返り気味になった。 『えーっと……ストレートに聞くけど、週刊誌の僕とザクロさんの記事、見た?』 「あ、はい……」 『あれ、九割本当で、一割嘘だから』 「……何が一割の嘘なんですか?」 『僕がザクロさんをお持ち帰りした、というところ』 「ふぇ?」ととぼけたような声を出した俺へ、侑弥くんが説明をしてくれたことをまとめると、こんな感じだ。 アイドルと若手俳優の合コンが開催され、それに侑弥くんが参加したのは本当。 ただしそれは嫌々の参加だった。 当初侑弥くんは、この合コンに参加するつもりはみじんもなかったんだそうで。 炎上にもつながりそうだし、つまらなさそうで面倒と思ったためだ。 しかしお世話になった先輩が、何度もしつこく参加を求めてきたので、侑弥くんは根負けし、行くと返事をしてしまった。 さて、今回の炎上相手である百日紅(さるすべり)ザクロだが、彼女は元々母娘で侑弥くんの熱心な古参ファンであり、侑弥くんも彼女のことを認知していたのだそう。 (古参ファンといっても、一度辞めた後の復帰後からのファンで、子役時代からのファンではない) 先輩がどうしても、と何度も誘ってきたのは実はザクロのせいであり――侑弥くんの知らないところで事前に取り決められていたのか、故意に泥酔したザクロは、参加者全員から全力で侑弥くんへおしつけられた。 しかしもちろん、侑弥くんは酔いつぶれているザクロをホテルへ連れ込むなんてことはせず、そのままタクシーで彼女の実家まで送っていった。 (以前舞台で共演した時の雑談で、「わたしの実家、都内にある某老舗有名和菓子屋なんです〜」とザクロが言っていたことを、記憶力の良い侑弥くんは覚えていたのだ!)
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