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『――だけどまさか週刊誌に撮られるとはね。うかつだったよ。まぁパパラッチの本命のターゲットは僕らじゃなく、今上り調子な別のアイドルだったみたいだけど』
「なるほど」
ため息まじりな侑弥くんの声を聞きながら、俺は思う。
百日紅ザクロ。どう考えてもお前、有害すぎる厄介ファンだよ。
お前絶対、侑弥くんの彼女になりたくて芸能界入ったんだろ。
お前の身勝手な欲望のせいで推しが炎上とか、マジで絶許。
今日から俺、お前のアンチになります。
『今僕が言ったこと、信じてくれる?』
スピーカーから聞こえてきた侑弥くんの、こちらの機嫌をうかがうような弱々しい声に、俺はちょっとびっくりする。
「もちろん信じますよ! 俺は全面的に侑弥くんの味方です!――もしかしなくても、事務所にメチャクチャ怒られました?」
『まぁ、それなりにね。うかつだぞ! って。けど真伍くんが信じてくれるって言ってくれたから、元気でた』
ふふ、と侑弥くんが電話の向こうで笑う。
「大変な時にわざわざ連絡くれて、ありがとうございます。記事見て、すごいやきもきしてたんで。SNSのトレンドにまで載っちゃうし……」
『ううん。こちらこそ不安になる報道出すようなことしてごめんね』
「事務所からコメントは出るんですか?」
『明日発表される予定』
「そうなんですね! それならよかった。公式から言ってもらえると、他のファンのみんなもほっとできますから」
『明日を待たずに僕がこうして電話したのはね、真伍くんの誤解は、できるだけ早く解いておきたかったからなんだよ』
「え?」
『だって真伍くんは僕の友達だから』
ズキッと良心と恋心が痛む。
「友達……そう言ってもらえて嬉しいです。ありがとうございます」
俺の罪を知らない彼は、無邪気で残酷で、優しい。
「あ、そうだ! もし俺にできることがあったら何でも言って下さいね!」
『ん? どういうこと?』
「トレンド載るくらい炎上しちゃったから、周りがしばらく騒がしいんじゃないかな、と思って。追加のスクープ撮るために、週刊誌の記者にストーカーされるとかありそうですし?」
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