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『ザクロさんとの間に後ろ暗いことは何もないから、彼らも僕にはりつくだけ無駄だと思うけど――そうだな、何かあったらお願いしようかな?』
「是非! 是非使ってやって下さい! パシリでもボディーガードでも! 待ってます!」
『じゃぁ、来月にでもご飯つきあってよ』
「へ?」
『人の噂も七十五日というし、現代のこの次々に炎上が起こる情報化社会じゃ、僕の炎上なんて、一ヶ月もしないうちにほとんどの人は忘れるだろうからさ』
*
炎上もいい加減鎮火しているだろう来月に、侑弥くんと食事へ行く約束をした、翌日。
侑弥くんが所属する事務所と、百日紅ザクロ所属の事務所から、「共演をきっかけに親しくさせていただいていると聞いています」というコメントが出された。
しかしそれでもしばらくの間、双方の一部のファンはSNSで醜く叩きあった。
アンチザクロな俺も、彼女の文句をつぶやく愚痴アカウントを作ってやろうか、と思ったがやめた。
東海林侑弥のファンの民度を下げないために。
しかし鬱憤はたまるので、飲み代を払うかわりに幼なじみの美波へ、ザクロの文句をリアルで言いまくった。
「百日紅ザクロは自分のせいで推しが炎上したの、どう思ってんだろうね?」
仕事を終えた後、よく利用する大衆居酒屋の片隅。
一通り俺の愚痴を聞き終えた美波が、頬杖をつきながらフライドポテトをつまみ、首をかしげる。
「知るかよ。あいつがまだ侑弥くんのファンだというなら、二度と侑弥くんに近づかず、迷惑かけないのがつぐないだろうよ」
分かっている。
それは、寝込みを襲った俺にもいえることだって。
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