14・テキーラサンライズ

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文章の後に、店のURLがつけられた侑弥くんからのLINEを見ながら、俺は静かにため息をつく。 早く友達からただのファンへ戻らなきゃなのに、俺ってば誘われるまま、何ノコノコ飯行ってんだよ。 でも恋心を封印したら、友達のままでいてもいいんじゃない? と、自分に甘いことを思ったりもして。 炎上一週間後にあった、侑弥くんが座長をつとめた舞台は、もちろん見に行った。 客席から俺は彼だけを見ていたけれど、当たり前に彼の視線は俺へそそがれるわけはなく。 (何度か目があった気がしたけど、俺がそう思った時、俺の周り三十人くらいもそう思っただろう) だから久々に侑弥くんの近くに居られて、彼が俺をちゃんと見て認識してくれて、更にはおしゃべりまでできるなんて嬉しい! という気持ちも大きかったりする。 ――喉元過ぎればナントカってヤツで、本当に俺って適当なダメな奴だなぁ……。 罪を自覚しているのに、生侑弥くんに会いたいという欲望を押さえられない俺を乗せた電車は、時間通りに目的の駅へついてしまった。 暖房がきいている暖かい電車内から、冷え冷えのホームへ降り、改札を出る。 侑弥くんとの待ち合わせ場所は、駅前にある、巨大で前衛的なモニュメントの前。 「――あ、真伍くん! 久しぶり!」 約束の時間より十分前に到着するよう計算して来たのに、既にモニュメントの前で侑弥くんが俺を待っていたからギョッし、慌てて駆けよる。 「お、お久しぶりです」 あーー! 油断した! 失敗した! そうだよ、侑弥くんは五分前集合できる、ちゃんとした人だった! 今約束の十分前だから、五分前どころの話じゃないけど! とにかく俺は侑弥くんより前に――三十分か一時間前からここでスタンバってなきゃいけなかったんだよ! バカー! 「寒いのに待たせてしまって、ごめんなさい!」 「僕もさっき来たところだから、全然待ってないよ。平気だよ」 優しく笑う侑弥くんの本日の服装は、濃紺のポロコートに、黒のパンツ。 コートの襟元からは、白いハイネックがのぞいている。 それにプラスして、パパラッチ対策だろう黒ブチの伊達眼鏡をかけていた。 フワァーォ! 侑弥くん今日も超カッコいいー! メロメロキュンです! 人であふれかえるこんな場所で、すぐに侑弥くんを発見できたのも、彼がカッコよすぎで輝いていたせいなんだけどな! あ! ちょっと離れた場所に立ってるOLっぽい二人組、侑弥くんのことチラチラ見てる。 うんうん、ついつい見ちゃうその気持ち分かるよ。 侑弥くん、カッコよすぎるもんな。 気になっちゃうのも当然。 でも逆ナンしてきても俺が阻止するから。ごめんねー★
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