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「俺が侑弥くんを嫌いだなんてあり得ないですから! ファンの俺が、推しのことを嫌いなわけがないでしょう?!」
「そっか、よかった! じゃあ今から僕らは恋人同士だね!」
侑弥くんは花開くような満面の笑みを浮かべ、俺の手を握ってきた。
その瞬間、
ブーーーー!!
俺の中で緊急警報の赤ボタンが押され、けたたましく脳内全体に鳴り響いた。
「――待って。ダメです」
「え?」
侑弥くんが小首をかたむけ、不思議そうな表情で俺を見る。
片想い相手からのせっかくの告白を断るなんて、ワケ分かんないですよね。分かります。
でもダメです。ダメなんです。
俺もあなたのことが大好きです。
だけど……恋人にはなれません。
「はい」って、俺はうなずけません。
「何で? 真伍くんも僕のこと好きなのに? どうしてダメなの?」
侑弥くんの手の中から自分の手を引き抜けば、彼は困惑と少しの苛立ちがまじった表情で俺へぐっと詰め寄り――爆弾を落としてきた。
「僕の家でハロウィンパーティーした日、真伍くんから眠っていた僕へキスしてきたのに? しかも唇にしたんだから、恋愛感情でのキスじゃない、と主張するのは無理があると僕は思うんだけどな?」
「ッ?!」
えええええ?!?!
侑弥くん、あの時起きてたの?!
そんで、今まで知らないフリしてたんだ?!
「僕ら、絶対に両思いだよね?」
侑弥くんが俺に一目惚れをしたと気がついたのは、風呂場の戸を修理した後だと、さっき言っていた。
つまりハロウィンパーティーをしていた時は、既に俺のことが好きだったわけで。
なのに、俺が寝込みを襲った時に「両思いだね」と言わず、今ここで「実はあの時意識があったんだ」とバラしてくるんだ?! 何で?!
いやまぁでも、今はそんなことは比較的どうでもいいんだよ。
それよりも、それよりもだ――
「あのキスのこと、別に怒ってはいないからね、本当に。寝起きだったし、びっくりしすぎちゃって、『嘘?! 夢じゃない?!』と動揺して、あの時気づいてないふりしちゃったんだ。――真伍くんからキスしてくれて、僕嬉しかったよ」
侑弥くんが人差し指と中指で、己の唇へふれる。
わぉ、セクシー!
――じゃなくて!
テンパりまくりで、感情ぐちゃぐちゃで、今俺すげーヤバくてマズイ。
脳ミソがキャパオーバー起こしかけてる。
だけど、ちゃんとしないと!
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