16・アプリコットフィズ

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炎上で覚めなかったはじめての気持ち()が、芸能人から一般人に戻った程度で消えるわけがない。 それだけは断言できる。 叶うなら、もう一度彼とキスしたい。 一度と言わず何度だって……それこそ、キス以上のことだってしたいよ! 「じゃあ――」 「でも俺……やっぱダメですっ。侑弥くんのこと死ぬほど大好きですけどっ、ポリシー的につきあえないですっ……ごめんなさい……」 頭がゆだって、思考がぐにゃぐにゃべちゃべちゃしている。 今俺の脳ミソって正常に動いていないよなぁ、なんて、他人事みたいに思っている自分がいる。 自分で自分がよく分からなくなる。 何言ってんだろ、俺。 ワケわからんポリシーなんて犬に食わせて、侑弥くんとつきあっちゃえばいいじゃない! こんなラッキー、俺の人生でもう二度とねぇぞ? ――だよねぇ。俺もそう思う。 うるさくわめく過去の自分なんて燃えるゴミに出して、他のファンの気持ちなんて考えず、サクッとハッピーとラッキーを享受するのが正解。 そしたら俺も、大好きな侑弥くんも幸せになれるんだから。 うん、そうそう。 そうするのがいいって分かっているんだけど―― 「ハロウィンの時、寝込み襲ってすみませんでした……」 「だからそのことで怒ってはいないって。謝らないで」 「侑弥くん……ごめんなさい。すみません……おつきあいできません。だけど大好きで、世界一愛してますっ……」 どういう感情で生み出されたか分からない涙が、ぽろりと一粒、俺の左目から流れた。 今泣きたいのは俺じゃなく、侑弥くんの方だろうにね。 せっかく勇気をだして告白したのに、俺以外には理解不能だろう理由でファンにフラれるなんて、思ってもいなかっただろうから。
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