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主人公は女子大生で、夏の二週間の物語。
彼女が親友と男の幼なじみの三人で、ゼミの教授の親戚が経営する、孤島にある洋館風ホテルへ行くところから話がスタートする。
着いた先でヒロインたちを待っていたのは、ミステリアスな従業員、訳ありっぽい宿泊客。
真っ赤なあかずの部屋と黄金の鍵。
そして起きる、オカルティックな惨劇。
封印されていた悲劇と、過去と今をつなぐ愛と恋。
後半「クサいな」と感じる箇所もあったが、王道で幕引きされる物語だったので、そのベタさもまた良いと思わせられる舞台だった。
美波の説明によると、今回上演されたのは、原作一番人気のメインヒーロールートの話であるらしい。
そのメインヒーロー役の演者も、今回の全キャストの中で一番人気とのこと。
だが、どうでもいい。
ヒーローくんが野郎だからどうでもいい、のではない。
美少女ヒロインや、同じくらい可愛い女友達役の演者にも、興味はない。
彼や彼女らは、俺の推しじゃないから、どうでもいい。
ただそれだけの話。
つまり俺は彼ら以外で、新しい推しを見つけたってこと。
*
大千秋楽だったせいか、三回もカーテンコールがあった。
よって、帰るために俺たちが乗り込んだ電車は、想定していたよりだいぶ遅い時間のものだった。
車内は少しだけ混んでおり、所々に席の空きはあるものの、二人並んで座れるスペースはなかったため、扉付近に美波と並ぶ感じで立つ。
「美少女好きのあんたがヒロインちゃんじゃなく、東海林侑弥にハマるとはねぇ! ……見抜けなかったわ。小一からオタクしてる、この私の目をもってしても」
「節穴なんだから黙ってろ」
「恥ずかしがらなくてもいいし。カッコいいもんね、侑弥くん」
「ニヤニヤすんな!」
イケメン動物園な舞台? ふーん? ほーん? へぇー?
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