17・推しを兄としたう男(前編)

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思い切って尋ねた途端、ガシッと襟首を掴まれ、間近でメンチを切られながら言われる。 萌葱くんが元ヤンという噂、ガチでしたー! 超怖いんですけど! 「兄貴として尊敬してるし大好きだけど、何か文句あんのか、コラ?」 「――あ、兄として、ですか?」 「優しくてカッコよくて面倒見もよくて仕事もできて、最高の兄貴だろうが! お前ファンのくせにどこ見てんだよ? 目ん玉腐ってんのか? アァン?」 あっ、ヤバイ。 こいつ、ガチ恋勢じゃないけど、違う方向でヤバい奴だ! 「い、いえ……兄として侑弥くんを見たことはなかったので……ファンですし。でも確かに、侑弥くんがお兄さんだったら、最高ですよね」 一応同意の姿勢をみせれば、ようやく襟首から手を離してもらえた。 すぐ暴力に訴えてくるヤンキー、怖ぇー。 こんな性格でよく仕事できてんな……。 ビビったのを隠しきれなかった俺を見て、バカにしたように萌葱くんがフンッと鼻を鳴らす。 「そうだ。侑兄は最高なんだよ。ファンのくせに忘れんな、ボケが」 一秒だって忘れてませんけどー?! ――しかし萌葱くんの下僕(スパイ)ねぇ……そんな人、バーにいたっけ? 俺は始終侑弥くんばかり見ていたから、他の客がどうだったかとか全く思い出せないや。 「今侑兄にな、日曜日の朝にやってる特撮の仕事の話が来てんだ」 「この無駄にえらく顔がいい、無許可ボディーガードと書いてストーカーと読む男にどう対応したらいいんだ?」と、俺が密かに考えていると、驚きの情報が知らされた。
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