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18・推しを兄としたう男(後編)
「マジで?!」
日曜朝にやってる特撮ってことは、バッタモチーフヒーローか戦隊モノだよな?!
どちらであれ、この時間帯の特撮番組にレギュラー出演することになったなら、超一大事だ!
何故ならこの枠の特撮番組は、若手舞台俳優が地上波に進出するための、重要な登竜門だから!
「おう、マジで。主演じゃなく脇役でだけど、メイン寄りの結構いい役で」
「あ、でもアレって、オーディションあるんじゃ?」
「オーディションあるけど、関係者からの情報で、最初からかなり目星ついてるってゆーか、つけられてるってゆーか。出来レースってわけじゃなく、最有力候補ってヤツ」
現在CMやドラマに引っ張りだこの大人気俳優たちの中にも、日曜朝放送の特撮出身者が何人もいる。
つまりこの枠の特撮番組に出るということは、侑弥くんが役者として世に羽ばたける、大きなチャンスってこと。
「ゆ、侑弥くん、すごい……」
侑弥くんが出るなら、子供のころみたいに毎週リアルタイム視聴するし、録画もするし、ブルーレイも全巻買うし、変身グッズも買うし、TDCへ握手しに行く!
――あれ? 握手できるのは中の人とじゃなく、ガワとだけだっけ?
まぁどっちでもいいや。
どうであれ応援しまくるってことだから、『大きいお友だち』に俺もなる!
「ちなみにオレにも話が来てる」
「へー、そうなんですね。おめでとうございます」
萌葱くんへのお祝いの言葉を述べながらも、俺の脳内では「侑弥くんはバッタヒーロー? それとも戦隊? 個人的にはバッタのがいいなぁ。でも侑弥くんのキャラ的には戦隊のが濃厚か?」と、今から妄想が止まらない。
「オレはこれからも侑兄と共演したい。侑兄に役者辞めて欲しくない……」
萌葱くんが目を伏せて切なげに言った言葉に、俺の意識が現実へ引き戻される。
「だから侑兄がお前のこと好きとか意味分からんし、スゲー気に食わねぇけど、侑兄が役者辞めるの止めたことだけは、誉めてやる」
「……辞めるの止められたかは、分かりませんよ。『役者辞めるのは前から考えていたことで、つきあいたいがためだけに辞めるわけじゃない』と、言ってましたから」
恋と夢は別。
俺とつきあわなければ、侑弥くんが俳優業を続けてくれるってわけじゃない。
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