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下僕派遣といい、侑弥くんの前から逃げたオレへの突撃といい、何なんだこの萌葱くんのよく分からない行動力は?!
妙な作戦に俺を巻き込むな!
「いーじゃん。オレの説が立証されれば、侑兄は役者続行で万々歳。ダメでも、お前は恋人をゲット。誰にも損ないだろ。お前は侑兄の告白断ってフリーなんだしさ」
「うっ……。でも、ええっと、俺の心境が無理っていうか……」
ポリシー的にどうしようもないから、断腸の思いで断るしかなかったのだ。
だから俺はフリーではあるけど、片想い継続中でもあるんだよ!
侑弥くん以外の人間なんかとつきあえる心境じゃないんだわ!
「それに、そう簡単に恋人なんてできませんよ。俺は萌葱くんや侑弥くんみたいにイケメンじゃなくて、そこらへんにたくさんいる、一山いくらのサラリーマンなんですから」
「合コンとかお見合いとかで、何とかなんねぇか?」
「なんねーですし、まだ結婚する気はねーです」
きっぱり断ったというのに、萌葱くんはあきらめることなく、しつこく食い下がってくる。
「頑張れば何とかなるって! やる前から――って……宮田ってさ、ちゃんと毎日働いてるサラリーマンだよな?」
「? はい、一応」
「今何歳?」
「二十四ですけど」
俺の年齢を聞いた萌葱くんが、にやりと笑う。
何だか嫌な予感。
「うん、よし! 丁度いいのがいるから、オレが相手紹介してやるよ」
うわ、ソッコーで嫌な予感当たった……。
「いや、マジでそういうの結構なんで」
「何だよお前、オレがブスとかヤベー奴紹介すると思ってんの? しねぇって」
萌葱くんはスマホをコートのポケットから取り出して数回タップした後、「ほらこれ! 見てみろよ」と、俺にスマホの画面を見せてきた。
「それなりにイケてる女だろ?」
萌葱くんのスマホのディスプレイには、仮に俺が交際を申し込んだとしても、お断りされそうな美人の画像が表示されていた。
黒髪セミロングで、細身で、色白。
アーモンド形の目はぱっちり二重で、鼻筋も通っている。
真面目で大人しそうな雰囲気。
年齢は俺と同じか、少し上くらいだろうか。
それにしてもこの美人――誰かに似ているような?
「この人、誰です?」
「オレの姉貴」
「へ?! 萌葱くんのお姉さん?!」
あぁー! なるほど!
言われてみたら、輪郭と口元が萌葱くんと似てる!
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