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「名前は萌葱くるみ。職業は看護士。お前と同い年の二十四歳。――ちょうど姉貴から、『誰かいい人いたら紹介してくれ』と言われてたの、思い出せて良かったわー」
「紹介っていっても、弟の萌葱くんに言うってことは、芸能界関係の金持ちかイケメン紹介しろってことじゃないです? というか、これだけ綺麗な人なんだから、引く手あまたで紹介なんかいらんでしょ」
「引く手あまたでも、本人に男を見る目がないから、寄ってくる中からゴミとクズばっか選ぶんだよ、コイツ」
「あー……」
「ウチの母親曰く、姉貴はダメンズウォーカーってヤツなんだと」
「オウフ……」
「お前って、一時の気の迷いだとは思うけど、一応侑兄がひかれた相手なわけじゃん。そんでもって、宮田はちゃんと毎日働いてて定期収入あって、DVも借金もしなさそうじゃん」
ガシッと肩を組まれ、ぐっと顔を近づけられる。
萌葱くんのファンなら卒倒していたかもしれないが、俺は侑弥くんのファンだし――脅してくる時のヤンキー仕草すぎて、ヒエッてなる。
「姉貴のこと、弟なりに心配してんだよ。一番最近の元彼はヒモ野郎のクズだったし、その前は度がすぎるマザコンで、更にもひとつ前はモラハラクソ野郎だったかな?」
えええ……マジで萌葱くんのお姉さん、ダメ男を渡り歩きすぎでは?
「ということでさ、つきあう云々はひとまず保留でもいいからさ、とにかく一度姉貴と会ってみてくれよ」
「いや……遠慮します」
これって説検証ってより、「男を見る目がない姉に、とりまクズ男じゃなさげな男を斡旋しよう」という比重の方が、高いような気がするんだけど?
あと、「侑兄の回りを飛び回る害虫も退治できて、一挙両得!」とか、萌葱くん考えていたりしない?
俺の気のせい??
「そんなこと言うなよー。仲良くしようぜ、宮田クン。なぁどこ住み? 暇だろ? LINE交換しよ?」
すでに肩を組まれているのに、もう一方の手で腕まで掴まれる。
萌葱くんの両方の手にぐっと力が込められ、「絶対に逃がさねぇぞ」という、彼の強い意思を感じる。
この歳にして、こんなタイミングで、ヤンキーにからまれるとは……今日の朝のテレビの星占い、俺の星座って最下位だったっけ?
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