19・バカな俺は嘘をつく(前編)

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今見るか数秒悩んだが、気になりすぎるので、思い切ってポケットからスマホを取り出す。 業務連絡の確認のふりをし、俺は立ったまま着信したメッセージを確認する。 …………萌葱くんからなんですけど……。 侑弥くんのアクリルスタンドと、辛いことで有名な店のラーメンが一緒に写っている画像一枚のみが、送られてきていた。 もう! ビビらせんなよ! てゆか何これ?! 誤爆?! 友達に送るはずが、間違えて俺へ送っちゃったのかな? どうせ誤爆するなら、アクスタじゃなく、本物の侑弥くんのオフショ送ってよ! 同じ事務所で、同じ芸能人で、侑弥くんのストーカーだろ! もっと頑張れよ! 「あの、書き終わりました」 「――あっハイ! では確認させていただきますねー」 眉間へシワを寄せていた俺は、慌ててスマホをポケットへ押し込み、営業モードへ切りかえて接客に戻った。 * 小一時間ほど残業をした後、電車に乗って帰宅する。 帰宅ラッシュの時間はおおよそ終わっており、四十代くらいのおっさんの隣があいていたので、そこへ座る。 手持ちぶさただったし、いつもの癖で、俺はコートのポケットからスマホを取り出す。 途端、LINEメッセージが着信。 『オイコラ無視すんな』 ポップアップで画面上部に表示されたのは、またしても萌葱くんからのメッセージだった。 そういや、意味分からん画像届いたのが仕事中だったから、返信していなかったんだっけ……と思い出す。 アレは誤爆じゃなく、俺宛の画像であってたのか……。 仕方ないので、ゆるキャラの『ごめんなさい』スタンプを押し、続けて『ラーメン美味しそうですね』と送る。 ……萌葱くん、面倒くせぇ。 でも、侑弥くんからじゃなくて良かったよ。 もし侑弥くんからだったら、気まずすぎて、すごく返信に困るもんな。 侑弥くんだって、もし今俺から連絡が来たら、ものすごく微妙な気持ちになるだろうな。 ――もしかしなくても、侑弥くんと俺との縁は昨日で切れて、あれでおしまいだったりするのか? フっておいて何言ってんだって感じだけど、もしそうならすごく寂しいし、悲しいし、残念だ。 だけど……たぶんそれで――その方がいい気もする。
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