104人が本棚に入れています
本棚に追加
今見るか数秒悩んだが、気になりすぎるので、思い切ってポケットからスマホを取り出す。
業務連絡の確認のふりをし、俺は立ったまま着信したメッセージを確認する。
…………萌葱くんからなんですけど……。
侑弥くんのアクリルスタンドと、辛いことで有名な店のラーメンが一緒に写っている画像一枚のみが、送られてきていた。
もう! ビビらせんなよ!
てゆか何これ?! 誤爆?!
友達に送るはずが、間違えて俺へ送っちゃったのかな?
どうせ誤爆するなら、アクスタじゃなく、本物の侑弥くんのオフショ送ってよ!
同じ事務所で、同じ芸能人で、侑弥くんのストーカーだろ! もっと頑張れよ!
「あの、書き終わりました」
「――あっハイ! では確認させていただきますねー」
眉間へシワを寄せていた俺は、慌ててスマホをポケットへ押し込み、営業モードへ切りかえて接客に戻った。
*
小一時間ほど残業をした後、電車に乗って帰宅する。
帰宅ラッシュの時間はおおよそ終わっており、四十代くらいのおっさんの隣があいていたので、そこへ座る。
手持ちぶさただったし、いつもの癖で、俺はコートのポケットからスマホを取り出す。
途端、LINEメッセージが着信。
『オイコラ無視すんな』
ポップアップで画面上部に表示されたのは、またしても萌葱くんからのメッセージだった。
そういや、意味分からん画像届いたのが仕事中だったから、返信していなかったんだっけ……と思い出す。
アレは誤爆じゃなく、俺宛の画像であってたのか……。
仕方ないので、ゆるキャラの『ごめんなさい』スタンプを押し、続けて『ラーメン美味しそうですね』と送る。
……萌葱くん、面倒くせぇ。
でも、侑弥くんからじゃなくて良かったよ。
もし侑弥くんからだったら、気まずすぎて、すごく返信に困るもんな。
侑弥くんだって、もし今俺から連絡が来たら、ものすごく微妙な気持ちになるだろうな。
――もしかしなくても、侑弥くんと俺との縁は昨日で切れて、あれでおしまいだったりするのか?
フっておいて何言ってんだって感じだけど、もしそうならすごく寂しいし、悲しいし、残念だ。
だけど……たぶんそれで――その方がいい気もする。
最初のコメントを投稿しよう!