19・バカな俺は嘘をつく(前編)

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あなたの気持ちに応えられない俺のことなんて、一秒だって待たなくていいんです。 だけど――俺のことを好きでいて欲しい。 あああ……俺ってマジでどうしようもない、最低野郎だ。 萌葱くんのお姉さんの、歴代のクズ彼氏たちと並んでも遜色ないくらい、俺もクズだ。 * 自宅へ帰り、約一時間。 俺はコートを着たまま、ローテーブルの上に置いたスマホの前に正座していた。 侑弥くんからメッセージを受けてから、ずっと返信を考え続けている。 いい加減、返事をしなければ。 俺はようやっとLINEの侑弥くんとのトーク画面を開き、考えに考えた言葉を入力する。 『昨日は逃げてしまってごめんなさい』 紙飛行機マークを押すと、数秒で既読になった。 ……この向こうには侑弥くんがいるんだな。 彼の存在を感じた心が、今まで以上に苦しくなった。 『あれからずっと、今も混乱しています』 『なので頭を冷やすため、お互いにしばらく、連絡を控えることにしませんか?』 卑怯でゴミクズな俺は、執行猶予をくれ、という旨のメッセージを送信した。 侑弥くんの手を取りたい。でも、取れない。 推しをあがめる純粋なファンだった昔の俺が、許さない。 だけど、そう簡単にあきらめられるわけもなく。 『そうだよね。考える時間、一晩じゃ全然足りないよね』 『分かった』 『気持ちと考えが落ち着いたら、連絡ちょうだいね』 俺がメッセージを送ってから数分後、侑弥くんから返事が届く。 侑弥くん、本当に優しいなぁ。 なのにどうして、こんな俺なんかを好きになっちゃったの……。
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