21・電話と久保田

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「それにさぁ、熱愛報道や結婚報道されるたび、俺は思うことがあって。 ギャーギャー文句言って騒ぐファンはさ、その芸能人の人生を一生保証できんのかっていう」 「え?」 「自分は恋愛して結婚するのに、『推しは芸能人だから両方するな』は無責任だし、暴論だろ。 死ぬまでファンでいてくれて、貢いでくれて、生活保証してくれんの? ってこと」 「……ファン(自分)と結婚すれば、保証するんじゃ?」 俺がそう言うと、ハハハと久保田が笑う。 「ただのファンでしかない自分を選べって? 無茶言うなよ。 自分が芸能人だったら……と考えたら、そんなこと言えねぇだろ」 「うん、まぁ、そうだな……」 「芸能人とファンの関係をグレードダウンさせて、『ホストと客』や『キャバ嬢と客』だって、そう簡単につきあえないっていうのに。 客がどんなにキャストを好きで貢いでも、ホストやキャバ嬢とつきあえたり結婚できるのは、少数じゃん。基本的に、客は客でしかないんだよ」 うっ、と俺は返事に詰まる。 「最初から別々のカテゴリー所属で、対等な関係性じゃないんだから、その枠を乗りこえようとするなら、お互い色々頑張ったり我慢したりしなきゃならんだろうな」 久保田が机へと向き直り、ペンと書類を持ちながら言う。 「大きく話がそれたけど、もし俺に推しができて、その推しが奇跡的に俺のことを好きになってくれたら、俺はそのチャンスを逃さずつきあうと思う。 バレないようにはするけど、他のファンのことなんて気にしない。 てゆかさ、フったら推しは失恋で傷つくわけで。そこスルーしていいのかよ? ていう」 「なるほどな……」 久保田の話を聞いていた、推しの熱愛報道で傷ついてきた『過去の俺』は腕を組み、難しい顔で今の俺を見ている。 決してにらんではおらず、ただ見ている。 まぁ過去の俺(コイツ)だって俺には違いなく、侑弥くんのことが好きなのだ。 コイツさえ何とかできれば話は早いのだが――まだダメだ。 まだ俺はコイツに、首に縄をかけられて握られたままだ。
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