22・平日午後二時のラウンジ

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返信せず、既読スルーで美波とのトーク画面を閉じた指で、侑弥くんとのトーク画面を開く。 侑弥くんとのトーク画面は、俺なんかが彼をフった翌日夜にやり取りした文面で、止まっている。 侑弥くんから告白されて混乱している俺が、「冷静になるためにお互いに連絡を控えませんか?」と提案し、彼が了承してくれて――以降、続きはない。 まぁその後、リアルでは会って話しているのだけど。 去年の年末、なんと侑弥くんが俺の職場からの出待ちをしてくれて……そこでの会話が、本当の最後の会話だ。 侑弥くんは寒い中、残業をしていた俺を二時間も待ち、俺の気が変わっていないかを聞いてきた。 答えられなかった俺へ、彼は次に「役者を辞めたら海外へ料理修行に行くけど、僕のことを好きでいて、待っていてほしい」と言った。 それに対して俺は、「年明けにお見合いすることになったから待てない」と、嘘をついた。 この後逃げ出した俺は萌葱くんに連絡し、今に至る。 侑弥くんは今、俺のことをどう思っているんだろう? まだ好きでいてくれていたりするのかな? LINE、ブロックされてないし。 ――って、ああああ!! 自分に都合いい妄想、キッショ!! 俺なんかの癖に図々しくて、調子乗ってるし、身の程知らず! あれだけ侑弥くんを理不尽に拒否った挙げ句、俺からくるみさんにコンタクトとって今会ってるっていうのに、自分バカじゃねぇの?! こんなゴミクズナメクジ野郎なんて、侑弥くんはとっくに見切ってるっつーの! バーカバーカ! 死んじゃえ! ……俺なんてマジクズで死んじゃえだけど……だけど……侑弥くん、好きだよ。 俺、あなたのことが大好きなんだ。 今すぐ会いたい話したい連絡とりたい! 世界一愛してるんだ……! * 「お待たせしてしまってすみません。――宮田さん?」 「あ、はい」 トイレから戻ってきたくるみさんに声をかけられたので、俺はスマホから顔を上げて返事をした。 すると彼女は二秒か三秒俺をじっと見た後、少しだけ首をかたむけて聞いてきた。 「私がお手洗いに行っている間に、何かありました?」 「いえ別に、何も……」
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