23・ごめんなさい、大好きです

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「もう遅いかもしれませんが……俺とつきあって下さいっ!」 抜け駆けを理由に、他のファンから俺が呪われても刺されても仕方がない。受け入れる。 でも侑弥くんを最後の推しとし、以降推しはもう作らないから、どうか今回だけ許してくれ。 「……ふぅん。自分以外の他のファンを思いやる、優しい君じゃなくなったってこと?」 「っ、」 俺の自業自得なんだけど、好きな相手に冷たく皮肉られるのって、想像以上にキツイな。 「推しは引退するまでは恋人を作らず、ファンに夢を見せ続けていて欲しい、という考えを持つのはやめたんだ?」 「いいえ……」 「……分からないな。じゃぁさっきの、『俺とつきあって下さい』という言葉は嘘?」 「嘘じゃないです! 本当の本当に、心の底からの気持ちです!」 コートのポケットに両手を突っ込んでいる侑弥くんは眉を寄せ、首をかしげる。 まぁそうなるよね。ワケ分からんよね。 ……あぁもう、説得しきれない過去の自分がマジで嫌になる。 でもこうするのが、ケジメかなって。 「だからっ……もし許してくれるなら、侑弥くんが海外から帰ってきた時、もう一度俺から告白させて下さい!」 「え?」 「それでその時、もしよければつきあって下さい!」 「はァ?!」 「ご、ごめんなさいぃ……」 これまでの押さえた怒りではなく、怒気を隠さない彼の声に、俺は慌てて謝る。 「今これからつきあって、じゃないんだ?」 とりあえず表面上の怒りを、百から七十くらいにまで下げた顔と声で、侑弥くんが聞いてくる。 「ファンが推しとつきあうことへのケジメと、身勝手な理論で侑弥くんを傷つけた、自分への罰です」 俺の回答に、侑弥くんは再び眉間にシワを寄せながらも、「……なるほど」と言った。 「つまり、僕が告白した時に言った通りの、引退したら恋愛OK理論ってことか。――君、勝手すぎない?」 「自分勝手がすぎることは重々承知しています!ごめんなさい、本当にごめんなさい!」 言葉の通り謝ることしかできない俺は、地面に膝をつき、そのまま土下座する。 「思考のアップデートだ!」と主張したり、「好きなものは好きだから仕方ない!」と、開き直ってみたりもしたが――過去の俺との妥協点はここだった。 ここが、ファンが推しとつきあうことの、俺なりのケジメだった。
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