104人が本棚に入れています
本棚に追加
「そんな勝手、許せると思う?」
「そうですよね……」
「許せないから、僕が海外修行から戻ってきたら、即結婚すること!」
…………え??
驚いた俺が土下座の体勢のまま顔だけ上げれば、しゃがんで俺を見つめる侑弥くんと目があう。
「そうしないと許さないし、この条件が受け入れられないなら、真伍くんの要求は全部却下します」
侑弥くんは俺の肩を掴んで引き起こすと、俺を抱きしめた。
「これは約束じゃなく、契約ね」
耳元でそうささやいた侑弥くんは、俺の耳へ口づける。
嬉しさで心臓がぎゅっとしめつけられた俺は言葉ではなく、抱きしめ返すことで彼に返事をした。
「これから僕の家行って婚姻届書いて、明日は婚約指輪を買いに行かなきゃ、許してあげない」
俺の背中へ回されていた彼の右手が下がり、俺の左手薬指を強く握る。
婚約なのにもう結婚届書くの? と、疑問が脳裏に浮かんだが、黙殺。
「……わ、分かりました」
侑弥くんの肩越しに見る、対岸にある遊園地の色とりどりのネオンがにじむ。
彼のコートが濡れちゃうから泣いちゃだめだと思うのに、俺の目はあたたかい涙を後から後からぽろぽろこぼした。
最初のコメントを投稿しよう!