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「終わりの時まで残り一日となりました」
数日前までは淡々と事実を告げていたラジオも、今日は声が震えている。ラジオと言っても素人が好き勝手に放送してるものだけど。
今日、世界は終わるらしい。
なんでも、大小さまざまな小惑星が、地球へと降り注ぐらしい。流星群さながらな、綺麗な終末で良かった気もする。
人々は、最期の時をいかに過ごすのかで最初のうちはメディアも沸いていた。けれど、今では誰も仕事をしなくなったようでメディアも機能していない。ネットも繋がらない。自分のしたい事、共に居たい人と過ごすことに意義を見出した人の方が多かったということだろう。
私は、といえば家族ももういないし、恋人というものもいない。したいこと、と考えた時に浮かんだのは美しい景色と美味しい食べ物の記憶だった。
自転車を漕ぎ、海の近くの街まで来た。海のない街に生まれた私は海に一際強い憧れを持っている。
海は全てを包み込み、冷たい潮風すら心を温めてくれる。見てるだけで癒されるというのも良い。海に行って何をするかといえば、ただ潮風を浴びながら寄せては返す波を見つめるだけ。
海沿いの街は静寂に包まれていた。お腹が空いたと主張したのでカバンを漁る。大きなカバンにありったけ詰めてきた食べ物はそろそろ底を尽きそうだった。
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