蛇孔村

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季節は夏。 日本の東北地方にある公立高校。 今教室でお昼休みを過ごしている高2男子の月倉 隼飛が、ダチと来週から始まる夏休みについて話していた。 「予定決めようぜ。アニフェスは日帰りじゃなくて連泊で行くだろ?」 「ああ。3泊4日で行こうぜ。初日と2日目はアニフェス堪能して、3日目はミラガル(ミラクルガールズ)のライブも観に行って・・・」 神谷が合槌うちながら応えて、話を聞き終えてから高松が言う。 「おれキャンプしたいんだけど。山キャン行こうぜ」 月倉と神谷が振り向き、高松が言う。 「この間一式揃えてさ、1人で行ってもアレだから行こうぜ」 「アレって何だよ?」 月倉が聞き返して、神谷が言う。 「寂しいし 夜怖いんだよ」 「違うし。独りで行ってもつまんないだろ。キャンプの楽しさを誰かと分かち合いたいんだよ。行こうぜ」 「お母さんと行けよ。あと犬のゴンザブロウと」 神谷が言い、月倉が笑う中で高松が言い返す。 「ゴンザブロウじゃないわよ。銀太よ。全然違うわよ」 「何で急におネエになった?」 月倉が言ったその時ーー 別クラスのダチのお調子者の酒田が教室に入ってきて、月倉たちの所へ後ろ向きダッシュでやって来て急停止して言う。 「ごめん待った!?」 「待ちくたびれたぜ」 月倉が言う。 「ごめんごめん 御免侍見参!」 酒田がポーズをキメて、沈黙が流れる。 「で、何の話だっけ?」 月倉がスベった酒田を放って言い、高松が言う。 「山キャンよ山キャンプ。山キャンプ行きましょうよ皆で。ね?」 「やめろよ気持ちわりぃーな。オカマと行ってられるかよ。ブスな妹と犬の斬九郎と行けよ」 神谷が言い、月倉が笑う。 「ヘイッ!マイシスターブジョクスルナヨ!コロスゾ!」 高松が神谷に食ってかかり、月倉が言う。 「アメ公になったぞ」 「ごめんごめん 御免侍見参!」 神谷が立ち上がって真似て、月倉がウケる。 「パクんなよ!使用料払え!おれの御免侍だぞ!」 酒田がパクってウケた神谷に憤り、神谷が言う。 「許せ許せ 許せ歌舞伎〜♪」 神谷が片手突き出して歌舞伎調に言い放ち、月倉と高松がウケる。 「くそっ!笑うな!おれの笑いを奪うな! おいお前らも笑うな!」 酒田が周りにいた女子たちに言い、悪態ついて隣の列の席の椅子を引いてきて座る。 「人のネタで笑いをとるなんてマナー違反だぞ神谷」 「使いどころだと思って」 神谷が椅子に座りながら言う。 「抜かせ虫螻が。恥を知れい」 「ひでェな。虫螻なんて面と向かって初めて言われたぜ」 「虫螻記念日だ虫螻。 So、」 酒田が話を切り替えて言う。 「諸君、おれはとんでもない物を発見してしまった」 「ブラか?」 神谷に月倉と高松が笑い、酒田が言う。 「もっと凄い物だ。もっと凄い」 「お父ちゃんのAVコレクションか?」 神谷が言う。 「それはとっくに発見済みだ。10歳の時にな。 違う。それじゃない。何だと思う?」 「10歳の時発見してどうした?」 「それは今はどうでもいいだろう? 早く次言ってこい。当てたらキスしてやる ケツに」 「シコッたぜきっと。朝から晩までシコシコ祭りだ」 神谷に月倉と高松が笑い、当てる気ない3人に酒田がキレる。 「オラァ!真面目にやれ!遊んでるんじゃないんだぞこっちは!」 「遊んでるだろ。何だよ御免侍って?聞いたことねーよ」 月倉が言い、神谷と高松が笑う。 「もういい。埒があかないからこちらから話す。全員ハズレだ。あとで全員ケツバットな。 おれは図書館でこれを見つけた」 そう言って酒田が腰から一冊の古い本を取り出して見せる。 「【蛇孔村伝記】」 「それが?」 「いいか?これは凄いぞ。心してよく聞け」 酒田が伝記に書いてある事を云々話して聞かせて、月倉がざっくりと理解する。 東北のある所に蛇孔村と云う蛇神を崇める民俗の村があり、神社の地下蔵には閉鎖的な村が護り続けた宝具があると云う。 「調べたがなんと今はその村 廃村になってるんだ。だからきっとお宝もそのまま埋もれてる可能性がある。発見されたニュースが調べてもないからな。ワンチャンあるぜ。 どうだ?ひと夏の冒険に行こうぜ。トレジャーハントだ。 酒田探検隊。隊長おれな」 すっかり乗り気な酒田に月倉たちが言う。 「行ってらっしゃい」 「気をつけてな」 「遭難注意」 「オラァ!お前ら!」 「何だよそのキレるやつ」 月倉が言い、神谷が言う。 「どうせ行ったって何もないだろ」 「あるかもしれないだろ!それを確かめに行くんだよ!」 「だから行ってらっしゃいって」 「み・ん・なで行くんだよ。 アニフェスもライブも8月だろ? 夏休み最初に探検行こうぜ。女子も誘ってさ」 「女子って誰を?」 酒田が意中の如月に首を振り、月倉が中学から友達として仲良い如月を見る。 如月と天羽 美女子2人が喋っていて、酒田が言う。 「誘ってくれ」 「行くなんて言ってないぞ」 「なあそう言わずに。 後生だ!付き合ってくれ!頼む! どうせ暇だろ?」 「失礼だな」 「飯奢るから!な?いいだろみんな? ありがとう」 「承知してねーぞ」 「はい行くの決定! はい ほら。誘え」 「自分で誘えよ」 「勇気出なくてぇ。頼むよハヤトン」 「ハヤトン言うな」 月倉は仕方なく振り向き、如月に言う。 「如月」 「なに?」 天羽と喋っていた如月が振り向き、月倉が言う。 「夏休みの始めにさ、廃村に探検行こうぜ」 「おい!もっと誘い方あるだろ!?」 酒田が雑さ加減に狼狽え、如月が言う。 「いい」 「ほらみたことか!何だよ探検行こうぜって!?それじゃガキっぽいだろ もっとロマンティックにだな 如月さん」 如月が酒田を見て、酒田がクールに気取って言う。 「一山当てておれとリッチにならないか?」 「え?」 酒田がザッと事を話し、聞いた如月が言う。 「嘘くさ」 「それを確かめに行くのさ!もしあったら!?もしとんでもない歴史的重要な財産があったら!?」 酒田がしつこく食い下がり、無駄足になったら代わりに遊園地に行って遊興費もつと言い、如月が天羽とセットで遊園地タダならと行くことに同意した。 「よっしゃ!これで役者は揃った!」 「役者って何だよ」 「日取りは・・・」 酒田が日取りを決めて、月倉の兄貴にまた車を出してもらっていいかと月倉に聞く。 「駄賃あげればな」 「払う。じゃあ決まりだな」 チャイムが鳴り、休み時間が終わり、間もなく先公が入ってきて授業が始まる。 酒田が欠席者の席に座ってバレないかやり、先公が課題の提出を求めて酒田と目が合い、互いに見合ってる2人に月倉たちが笑う。 「何してる?」 「おれですか?」 ウケる月倉たちをよそに酒田が惚けて聞き返す。 「お前以外に誰がいる?」 「おれっちは・・ おれっちのクラスここじゃなかったッ!」 酒田が慌てて立ち上がって行き、月倉たちが笑って見送る。
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