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1週間後。
夏休みに入り、酒田探検隊は駅前集合でこの日 蛇孔村へと出掛ける。
ミンミンゼミが鳴く中で、酒田と神谷と高松と如月と天羽が駅のロータリーに集合して、酒田が飛び入り参加した部活友達の山﨑を如月と天羽に紹介する。
「変なヤツじゃないから安心して!マゾっ気あるけど決して変なヤツじゃないから!」
「マゾっ気あるとか言わなくていいでしょ!普通に紹介してちょうだいよ!」
山﨑が芸人っぽい言い方でつっこみ、酒田が言う。
「ああ おれとしたことが!つい口がスベッちまった!済まん!必死なあまりつい言っちまった!
済まない 今後は気をつけるよ。山﨑はお母さんとたまに一緒にお風呂入る仲だなんてことは口が裂けてもーー」
そう言ってハッと口を覆う酒田に山﨑が言う。
「いや確信犯でしょ。ほら 2人ドン引きしてるじゃないですか」
山﨑が女子2人の顔を見て言い、酒田が山﨑の10の秘密を暴露し始めて、神谷と高松がウケながら観賞する。
待ち合わせ時間の10時5分前に隼飛の兄貴の陽(22)がドライバーのミニバンが乗りつけて、山﨑は寝るときおしゃぶりするという5つ目の秘密を暴露したところで酒田が話を切り上げて言う。
「来たぞ!お迎えが来たぞ〜!」
「大損害だ」
山﨑に神谷と高松が笑ってる中でミニバンが止まり、酒田が開けて言う。
「レディファーストだ。さあ どうぞ」
エアコン効いた車内に前から如月と天羽と酒田と神谷と高松と山﨑が乗り込んでゆく。
「よしみんな乗ったな。一二三四五六 OK!」
酒田が指で数えて言う。
「出発っ!」
「六人目誰だよ 恐ぇーな」
助手席の月倉が振り向き見ながら言い、神谷が笑う。
ミニバンは発進して行き、酒田が本日のスケジュールを話し、陽(のぼる)にどの位で目的地に着くか聞く。
「到着予定時刻は13時15分だ」
陽がナビを見ながら答える。
「サービスエリアでお昼休憩とるから大体14時過ぎくらい着か。
先は長しだな。まあ気長に行こうぜみんな!」
如月は天羽とお喋りして、高校生たちは喋りながらドライブを満喫する。
車は高速道路に入って行き、酒田がバックパックから暇つぶし用に色々持ってきた物で、女子2人を退屈させないように音頭を取り続ける。
PM12:07。
車はサービスエリアに入って、一行はお昼休憩をとる。
高校生たちは降りて、喋りながらフードコートへと入って行き、バイトで大金貯めた酒田が皆に奢る。
「いくらまで食べていいんだ?」
神谷が聞き、酒田が答える。
「好きなだけ食べてくれ。遠慮せず王猩牛いっちゃってくれよ」
「太っ腹〜♪」
如月が王猩牛の店を見ながら嬉しがり、天羽と3500円のステーキセットにして、高校生たちはランチを堪能する。
「バイトって何したの?」
如月が酒田に聞き、酒田がかつ丼を食べながら答える。
「ガソリンスタンドとうちの酒店の配達。平日と土日で勉強捨てて働きまくった」
「捨てたんだ」
月倉が軽く笑みを浮かべながら言う。
「何かを得るには何かを犠牲にしなければならないからな。やむを得ない選択だった」
酒田がかつ丼をかきこみながら言う。
「やむを得なくないだろ。上手くやれよ」
「両輪じゃ稼げないんだよ。おれは稼ぎたかったんだ 夏に向けてな。この半年頑張ったよ。大変だったな」
「ご苦労様でした」
「ありがとうございます!」
酒田が愛しの如月から労いの御言葉に感銘を受けて昇天する。
PM13:15。
一行はサービスエリアを後にして、車は本車線に合流して、目的地へとひた走って行く。
お腹満たした高校生たちはまったりモードで、天羽が言う。
「このままオアシス(リゾート施設)行かない?」
「行きたい」
如月が賛同して、天羽が酒田に言う。
「目的地変更でお願いします」
「いけませんぜお嬢様方。あなた達が行く先は蛇孔村でございやす」
「やだ〜」
「【やだ〜】って。【やだ〜】じゃないですよ。行くんですよ。行き先は蛇孔村です。
お宝あるから!リッチになろうぜ!」
酒田が言い、盛り上げる。
PM14:20。
車は高速道路から降りて、片道一車線の国道を走って行き、月倉が山々景色を見る。
数km走ったあと、ナビ通りに国道から中央車線跨いで脇道に入って行き、山道をミニバンが走って行く。
「ギリギリだな」
陽が狭い山道を運転しながら言う。
「こっち側崖っぽい」
隼飛が草木が生い茂ってる側を見ながら言い、車は突き進んで行く。
そしてーー
1.5kmほど走った先に立ち入り禁止の錆びれたフェンスがあり、車が停まる。
フェンスの向こう側にはトンネルがあり、陽が高校生たちに言う。
「着いたぜ」
「行くぞみんな!」
酒田が言い、皆が車から降りる。
蝉が盛大に鳴く山中に8人が降り立ち、片側は山の斜面、片側は谷、この何十年間誰も来てないであろう辺りを見回す。
隼飛がフェンス越しにトンネルを見る。
真っ暗なトンネル。先が見えない。
「めっちゃ怖いんだけど」
天羽がトンネルを見ながら恐怖し、隼飛もビビる。
「大丈夫大丈夫。トンネルなんて暗いだけさ。どうってことないない」
酒田がフェンスの錆びた小さい南京錠を見て、バックパックから錠壊しを取り出して、破壊する。
「器物破損だ」
隼飛が見て言う。
「最初から壊れてた」
酒田がそういうことにしてフェンスを開けて通り、隼飛たちが続く。
如月が天羽の腕を引いて行き、陽は行かずに車で待つ。
7人がトンネルの前に立ち、真っ暗なトンネルに酒田以外がビビる。
酒田が大型の懐中電灯を取り出して、かなり先まで照らす。
障害物は何もなくなく、酒田が言う。
「ただの暗いだけの道だ。恐るるに足らず!
いざ 酒田探検隊出発!」
酒田が先陣切って行き、神谷もバックパックから一応持ってきた懐中電灯を取り出して月倉たち男子が続く。
中に入るとひんやり いや相当冷気が漂っていて、月倉が悪寒を感じて身震いする。
気味悪いトンネルに天羽が動かずに言う。
「行くのやめよ。
わたし待ってるから」
怖いし自分も行きたくないが約束は守る主義の如月が行くと約束したからには同行すると
「大丈夫。目瞑ってればいいから」
天羽の手を繋いで引っ張って行く。
酒田が明るく行こうと歌を盛大に歌いながら歩いて行き、300メートルほど進んでから月倉が振り返る。
向こう側の明かりが小さく、さらに歩いて行くとついには来た側からの明かりも消えて、引き返そうと天羽が泣きそうな声で言う。
「大丈夫だ!時機向こう側に出る!みんなで歌って行こうぜ!」
酒田が士気を保つ為に音頭を取り続けて、一行はひた歩いて行く。
そして、一行が1000メートルほどのトンネルを抜けると・・・
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