蛇孔村

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月倉たちが息を切らしながら命懸けで走り続けて、トンネルから飛び出して行く。 月倉が振り向き、遅れて走ってきた神谷と酒田を見る。 神谷と酒田がトンネルから抜けて、月倉が言う。 「この後どうする!?」 「わかんねーよ!とにかくーー」 神谷が辺りを見回しながらどうするか思案して、月倉たちも辺りを見回しながら必死に考える。 「どこか一旦落ち着ける場所を探そう!ここはマズい!」 神谷が言い、懐中電灯で山道を照らして、進み出す。 「もういや・・帰りたい・・」 ずっと泣き続けている天羽が恐怖に嘆き、心底同じ思いの如月が月倉を見る。 「行こう。みんな固まって行こう!」 月倉が言って先導する神谷に続き、天羽が天羽の手を引いて高松と山﨑と酒田と続いて行く。 神谷が行く先を照らしながら歩き、分岐点に来た。 このまま真っ直ぐか、左へ下り坂を逸れて行く道かで分かれていて、神谷が真っ直ぐへ進行して行く。 そのまま5分ほど歩いていると・・・ ライトが鎌持って道端につっ立っている初老の男を照らして神谷がハッとして立ち止まる。 さっきの女と同じで白肌に黒目の男がゆっくりと振り向き、同じくボイスチェンジャーの様な異様な声で狂ったように高笑いしながら鎌を振り回して襲いかかってくる。 「戻れッ!」 神谷が踵を返して慌てて逃げ出しながら叫ぶ。 「グアハハハハハ」 襲ってきた狂気の男に天羽が悲鳴をあげて、月倉たちが脅えて逃げ出す。 「優奈っ」 如月が引っ張るが天羽が腰を抜かして動けず、男が天羽に標的を変えて迫り、如月と天羽が悲鳴をあげる。 神谷がバックパックを男の顔へ咄嗟にブン投げて、顔面に当たった男が蹌踉めき、すかさず迫った神谷が飛び蹴りをかます。 「ウァッ」 男が倒れて、空手二段の神谷が女子2人を押して叫ぶように言う。 「逃げろ!ほら早く!」 如月と天羽が動き出して逃げて、神谷が呻きながら起き上がってくる男の傍に落ちてるバックパックを掴み拾って逃げる。 高松が懐中電灯で照らしながら分岐点まで先導してきて、遅れて走ってくる神谷を振り向く。 向こう側からまた女が笑いながらやって来て、高松たちがパッと振り向き、神谷が走りながら言う。 「そっちだ!」 高松たちが下り坂への道を駆け出して行き、走り下って行く。 「きゃあ!」 天羽が転んで、月倉たちが立ち止まって振り向く。 「大丈夫かっ!?」 「優奈!」 如月が屈んで心配して、神谷が傷口を照らす。 「立てるか?」 天羽が力なく頷き、膝を擦り剥いた天羽が如月の手を貸りて立ち上がる。 「エモノダ ニガサナイゾ」 猟銃を持った猟師の男が天羽たちを見て近寄って行き、猟銃を構えて狙い撃つ。 パァン! 「うあッ!」 山﨑が倒れて、炸裂音にビクッとした月倉たちが何事かと振り向き、倒れている山﨑を見る。 「山﨑!」 「グアハハ シトメタゾ」 猟師が足早に迫って行き、神谷が草音に振り向き、ライトを向ける。 「おいうそだろ 銃だ!逃げろ!」 神谷が猟銃持った男を見て叫ぶ。 「エモノガタクサンイルゾ」 猟師が笑いながら銃を構えて、月倉たちが散り散りに銃口から逃げ出して行く。 「イッピキノコラズニガサナイゾ」 猟師が笑いながら追い駆けて、腕を撃たれた山﨑が痛みに喘ぐ。 月倉が如月と天羽と木陰に隠れ潜み、月倉たちは息を潜める。 「ドコダ?ドコニイッタ? シトメテヤルゾ」 猟師が探し回り、神谷が畑脇にある小屋に寄り、鍬とシャベルを見る。 神谷は鍬を手に取り、暗闇の中で猟師を覗う。 「ニゲアシノハヤイヤツラダ」 猟師がドサドサと荒い足音立てて探し回り、茂みの側を通る猟師を高松と酒田が息を殺してやり過ごす。 月倉が身を上げて山﨑の様子を覗い、ピクりとも動かない山﨑を見る。 撃たれて死んだのか、生きてるのかここからじゃ分からない。 と・・・ 鼻歌歌いながら女が下り降りてきて、道端に倒れて喘いでいる山﨑を見つけて高笑いながら言う。 「クモツヲササゲナイトイケナイワ」 女が山﨑に迫って行き、月倉が助けに行くか 脅えて躊躇する。 あまりの痛みに目を閉じてじっと喘いでいた山﨑が迫る足音に目を開けて、振り向くとーー 女が笑いながら包丁を振り下ろしてきて、胸にズブりと刃が突き刺さる。 「うぐっ・・」 女が笑いながら何度も突き刺して、滅多刺しにする。 月倉が恐れ慄き、山﨑が口から吐血しながら声にならない声の断末魔をあげて、女が山﨑を刺し殺す。 月倉が脅えて身を引っ込めて、如月が小声で聞く。 「どうしたの・・?」 「山﨑が殺された」 「えっ・・」 月倉が今し方目撃した残虐な光景に吐き気を覚えて、如月と天羽が一層脅える。
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