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神谷たちは廃屋から出て、神谷が辺りに目を光らせながら皆を先導して行く。
道端に角材が落ちていて、剣道やってる高松が武器として拾って行き、月倉たちは今にも周囲の暗がりから化け物が出てきそうで怯えながら足早に続く。
鴉髀地区から抜けて、荒れた田畑が広がる道に出て、神谷たちは瓦田地区に入って行く。
神谷が懐中電灯を周囲に照らしながら進んで行くと・・・
「メイコハホントイウコトキカナイコダネェ・・」
ブツブツ言いながら鍬で憑かれたように耕している婆がいて、電灯の明かりにゆっくりと振り向く。
「ギエエエエエ」
婆が鍬を手に向かって来て、神谷が言う。
「走れッ!」
神谷たちが走り出して、婆が叫びながら追ってくる。
「もういやっ!」
天羽が疲れ切った様で駆けながら言い、高松も同じ気持ちで言う。
「逃げ場なんてあるのかっ!?」
神谷が走りながら瓦屋根の一軒家を見て、そっちへと皆を先導して行く。
黒田の表札がある黒田家に入って行き、神谷が引き戸を開けて入って中を確かめる。
化け物はいなく、今度は此処に身を潜める神谷たち。
肉体的にも精神的にも疲れ切ってる月倉たちはへたり込み、皆口数少なく項垂れて現状に只々参る。
神谷たちが何故こうなったかをトンネルに入った時からの事を話しながら何とかこの非現実的事象を理解しようとして、30分ほど話していると・・・
突如 鐘が鳴り響き、神谷たちが話を止めて何事かと顔を上げる。
婆が火の見櫓で笑いながら鐘を鳴らして、周囲の祟られ人たちが寄り集まってくる。
「何だっ?」
月倉が不安に立ち上がり、神谷と高松と酒田と外へと見に行く。
引き戸を開けて外の様子を覗い、鐘が鳴り響く方を見る。
婆が鐘を鳴らし続けて、大勢の祟られ人たちが畑沿いの道を歩いてきて、一部が黒田家のへと流れてくる。
「くそっ!こっち来やがった!」
神谷たちが急いで引き返して、如月と天羽に声かけて勝手口へと向かって行き、外に出て裏山道へと逃げる。
神谷が先導して山道を駆け上がって行き、先から爺が鉈握って降りてきて、神谷たちが急停止する。
「ワシノヤマダゾ カッテニハイルナ」
爺が鉈を振り上げて襲いかかってきて、高松が角材を竹刀のように構えて勇ましく応戦する。
大振りな爺の一撃を見切って懐に飛び込みながら面打ちの一撃を脳天に振り下ろし、爺が呻いて倒れる。
高松が見下ろし、爺が起き上がりながら言う。
「コワッパガ コシャクナ」
「とどめを刺せ!」
神谷が高松に言い、高松が起き上がってくる爺を狼狽えながら見つめる。
見た目は化け物だが頭を滅多打ちにするのは気が引けてしまい、躊躇する。
「コロシテヤルゾ」
爺が再び襲いかかり、高松が小手打ちからの面打ちを浴びせて、蹌踉めいた爺の脳天に思い切り角材を振り下ろす。
頭蓋が割れて爺も倒れて、呻きながら悶える。
「もういい!行こうッ!」
高松が言って、神谷たちは爺の側を通り過ぎて行く。
神谷が懐中電灯で行く先を照らしながら足早に進んで行き、分岐点に出る。
神谷は左に曲がって行き、月倉たちが続く。
お地蔵が両側に並ぶ山道を足早に歩いて行き、天羽が笑みを浮かべているお地蔵に恐怖する。
神谷が行く先から現れそうな雰囲気を感じながら先頭を歩いて行き、ライトがお参りしている婆と坊やを照らし出す。
婆と坊やが振り向き、坊やが言う。
「バッチャン アノヒトタチダレ?」
「ヨソモノダネ カッテハイッテクルンジャナイヨ バチアタリモンガ」
婆と坊やが迫って来て、神谷が後退る。
「ギエエエエエ」
婆が狂気に叫びながら勢いよく突進してきて、神谷が前蹴りをする。
婆が倒れて、坊やが泣き叫ぶ。
「イタイジャナイカ トシヨリニナニスルンダヨ」
起き上がってる婆を見ながら神谷が言う。
「走れ!」
月倉たちは神谷に続いて駆け抜けて行き、婆が悪態を叫び、あとを追う。
神谷は走りながら月を見上げて、不安にかられる。
月の位置がまったく変わっていなく、この世界の時間の経過はどうなっているのか、陽は昇るのかと、神谷は不安を抱きながらお地蔵の道を抜けて行く。
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