これからもよろしく

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これからもよろしく

 あの夏休みから五年の月日が経った。ボクたちも高校生になっていた。  今年の夏も例年通り暑い。あの夏と同じだ。 「あ、佑香ちゃん」  ボクは彼女へ声を掛けた。 「ンうゥ、なによ?」  彼女はボクを見上げて微笑んだ。笑顔が無性に可愛らしい。 「そういえば小学校五年生の夏、海で告白したの覚えてる?」 「え、海で……?」思い返しているようだ。 「なんだよ。覚えてないの。離岸流でゴムボートが流されて帰って来れなくなったじゃん!」 「ああァ、チビ太が沖で泣いた時かァ?」 「あのねえェ……、泣いてねえェよ。ほらァあのときさァ。勇気を出して告白したじゃん」 「フフゥン、そんなこともあったかしら。懐かしいわね」  妙にノスタルジックな気分だ。 「あのとき、佑香ちゃんがボクの方が大きくなったら考えてあげるって応えたじゃん」 「フフ、そうだったかしら?」  また彼女はボクを見上げた。 「ほらァボクの方がずっと大きくなっただろう」 「フフゥン、そうかしら?」  佑香はボクを見上げて意味深に微笑んだ。 「ああァそうだよ」 「待っててね。今日の運勢は?」  佑香はスマホを取り出した。  ボクは先回りしてやぎ座の運勢を読み上げた。 「『やぎ座の今日の運勢は自分を信じ、前向きな姿勢で物事に取り組むことが大切な時。運命的な人と出会いがあるでしょう。チャレンジ精神を忘れず自分の可能性を信じて行動をしましょう』だよ」 「え、マジで?」 「ああァ、自分の目で確かめろよ」 「わかったわ。じゃァこれからもよろしくねえェ。チビ太!」  佑香はボクの腕に甘えるように抱きついてきた。まるで恋人みたいだ。 「ハッハハッ、もうチビじゃないけどな」  ボクをチビ太と呼ぶのは佑香だけだ。  こうしてボクは彼女と付き合うことになった。  これからは、ほんの少し星占いを信じても良さそうだ。  THE END
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