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チビ太
ボクの小学校のあだ名は『チビ太』だ。
もちろん現在では『チビ太』なんて呼ぶヤツはいない。
何しろ今では背丈も百八十センチ近くまで伸びたのでほとんどボクよりも背が低い。
本名は天野祐太と言う。
中学へ入るまでは背が低くコンプレックスだった。いつも背の順では一番前だった。今では嘘のような話しだ。
ボクの父親も背が伸びるのが遅かったと言うが遺伝なのだろうか。ボクも高校へ入学するとずい分背が伸びた。
久しぶりに小学校の頃の友達と会うと、決まって『大きくなったなァ』と言われた。まるで田舎の祖母ちゃんみたいな言い種だ。
今ではすっかり背丈のことで劣等感もない。
だが唯一、今でもボクのことをチビ太と呼ぶヤツがいた。ヤツと言ってもアイドルみたいな美少女だ。
今朝も顔を合わせると彼女は微笑んだ。
「よォ、チビ太。おはよ」
幼馴染みの三上佑香だ。まるで男子の友達のように飛びついて肩を組んだ。
登校ちゅうの他の生徒たちが驚いていた。
「おいおい、佑香。頼むからチビ太って呼ぶなよ。オレの方がずっと背が高いだろう」
ボクの方が佑香よりも頭ひとつ大きい。
「いやいや、だって私にとってチビ太はチビ太じゃん」
佑香はワケのわからない言い訳をした。
「あのなァ」
未だにボクのことをチビ太と呼び続けるのは彼女だけだ。
だが彼女には頭が上がらない。彼女はいつもボクらのリーダーで引っ張って来てくれた。男勝りで気が強い。しかもアイドルみたいに可愛らしいので、みんなから慕われていた。
ボクの初恋の美少女だ。
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