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小学校五年生の夏休み
小学校五年生の夏休み。ボクは佑香に告白をした。
あの日、ボクは彼女に誘われ近所の遊泳禁止の海でゴムボートに乗り沖合いまで出かけようとした。
空は青く澄んで雲ひとつない。ギラギラと灼熱の太陽が照っていた。
すでに三十五度近い。今日も間違いなく猛暑日だ。
絶好の海水浴日和なのだが、海水浴客もほとんどいない。海自体はキレイなのだが、遠浅の逆で、浜辺からほんの少しでも沖へ行くと急に深くなり、危ないので遊泳禁止になっていた。急深というらしいが、あまり聞き馴染みがない。
『ねえェ、ヤバいよ。佑香ちゃん。ここは遊泳禁止だから。あんまり沖に行くのは』
『ハッハハッ、ビビんなよ。平気、平気。誰もいないし、もっと沖まで行こうぜ』
まったくボクの忠告など聞く気がない。ゴムボートを漕いで沖へ向かった。
行きはスゴく楽だったが、帰りになると潮流の流れで浜辺へ戻れなくなってしまった。
『わァ、いっくら漕いでも戻れないじゃん』
ボクは必死にゴムボートを漕ぐが、まったく岸辺に近づかない。
離岸流と言う現象だ。いくら戻ろうとしても潮流が岸から沖へ向かって流れているため戻れない。
『うっるさいなァ。もっと気合い入れて漕げよ』
『無茶だよ。だからイヤだって言ったのに』
思わず泣き言をいった。
『知るか。大丈夫だって』
しかしまだ佑香は余裕だ。
『はァ……』どうしよう。このまま漂流したら。そう思うと余計、咽喉が渇いてきた。
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