漂流

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漂流

 はァ、どうしよう。このまま漂流したら。そう思うと余計、咽喉が渇いてきた。 『ゴックン。あ、あのォ、咽喉が渇いたんだけど……』  ヤバい。  この夏はやたらに暑かった。連日のように熱中症で救急搬送されるニュースが流れていた。このまま浜辺へ戻れず、漂流していたら間違いなく熱中症になるだろう。  ボクは海水を掬って襟首や身体の表面に掛けた。海水もやけに生ぬるい。 『はァわかったよ。ほらァ、私の水をやるから泣くなよ』  憮然とした顔で佑香は、ボクへペットボトルを寄越した。 『べ、別に泣いてなんかいないけど、どうもありがとう』  佑香の手前、強がりを言った。早く打開策を見つけないと本当に危険だ。 『ううゥ……』  ボクは佑香が口をつけたペットボトルの飲み口を見つめた。このまま口をつければ間接キスだ。こんな危ない状況でなければ喜ぶところだが、今は浮かれている場合ではない。ボクはひと口飲んだ。あまり飲んでは悪いだろう。 『ハイ、どうもありがとう……』  ちゃんとキャップを締めてから礼を言ってペットボトルを返した。 『うん……』佑香もうなずいた。  どれくらい流されたのだろう。かなり長く感じたが数十分だったのかもしれない。肌が焦げるような日差しだ。こまめに海水を火照った身体に掛ける。 『ううゥ……』  また咽喉も渇いてきた。しかし何度も佑香から水をもらうわけにはいかない。  まるで遭難したタイタニック号で救助を待つディカプリオの気分だ。
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