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救助
『おかしいなァ。今日のやぎ座の運勢はご機嫌だったのに』
佑香はため息まじりに嘆いた。
『フフ、好きだな。佑香ちゃんは星占いなんて』
ボクの星占いの運勢も最高だった。
告白するには最良だと結果が出ていた。だがあまり信じていない。しかしあまりにも佑香が信じているので仕方なくボクも合わせていた。
『ぬうゥッ、しょうがないなァ』
佑香が立ち上がりTシャツを脱いで水着になった。派手なショッキングピンクの水着だ。かすかに膨らんだ胸元に目を見張った。近くで見るとドキドキしてきた。
『え、何する気?』ボクは驚いて視線を逸らし彼女へ訊いた。かすかに声が上擦っていた。
『私が岸まで泳いで救助を呼ぶから待ってて。チビ太!』
『え、泳ぐの。佑香ちゃんが?』
『フフゥン、大丈夫よ。泳ぎには自信があるから。小さい時、水泳教室に通っていたしね』
ゴムボートの上で軽くストレッチをした。小さなボートがユラユラと揺れた。
『はァ……』確かに泳ぎでは佑香に勝てない。
『じゃァ』佑香はゴムボートのヘリに足をかけ飛び込もうとした。
『あ、ちょっと待って』
慌ててボクは佑香を呼び止めた。
『はァ、なによ?』
彼女は顔だけ振り返った。
『佑香ちゃん。もし助かったらボクと……』
『ン、ボクとなによォ?』
『ボクと付き合ってくれない?』
なにしろ今日は告白するには最良の日らしい。覚悟して告白した。
『え、付き合って。なに考えてんのよ。こんな緊急時に』
『でも星占いでェ……』
『フフゥン、じゃァ私よりも背が大きくなったら考えてあげるわ』
『な、背が。マジかァ』なんだ。
それでは今は絶対に無理だと言うことだ。
『じゃァ』
再度、佑香は飛び込もうとした。だがその時、地元の漁船が近づいてきた。
『お嬢ちゃんたち。危ないからあんまり沖へ出るなよ』
よく日に焼けた漁師が白い歯を見せて笑った。まさに命の恩人だ。
『はァ……』助かった。
ボクたちが沖で立ち往生しているのを見かねたようだ。
結局、地元の漁師の船に救助された。下手をすれば海上保安庁に連絡されているところだ。そうすれば、夕方のニュースにも取り上げられるだろう。
遊泳禁止海域でゴムボートを使って遊んでいたことが学校へバレれたら大ごとだ。
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