1 馬に蹴られて異世界転生

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「だけど、せっかく修学旅行で来れたんだからさ、せめて目一杯楽しんだら? ずっと来たかったんでしょ?」  楓はそんな私をスルーしてクールに話し掛けてくれる。だけど、確かにその申し出は当たってる。 「そうだね! ありがとう!」 「うんうん。ちゃんと付き合うからさ。自由時間も限られてることだし」 「ああっ! そうだった! ぼんやりしてる場合じゃない! もっとがつがつ見ないと!」  私は鼻息を荒くする。 「さっきからがつがつしまくってる気がするけど……」  ため息を吐いて呆れながら、楓はしっかりと付き合ってくれる。持つべき者は優しい友だ。そんなことを思っていたら、 「ん? あの人だかり、なんだろ」  楓が指を指す。視線を向けると私たちが行く先になんだか人が集っている。 「なんだろう? 行ってみよう!」 「ちょ、心菜! 着物で走ると危ないって!」  そういえば、辻チャンバラもあるとか入り口に書いてあった気がする。そういうイベントかもしれない。生でチャンバラが見られるのなら見逃すわけにはいかない。  慌てて向かった先でやっていたのは、 「……!?」  時代劇の撮影だ。  大声で叫びそうになってしまったのを根性で飲み込む。  撮影中に声なんか出したら撮り直しになってしまう。私のせいでそんなことになったら困る。 「どうしたの? 何やってるの?」 「しっ!」  追いついてきた楓も、ひょこひょこと人垣の向こうをのぞいている。 「え、撮影中?」 「そうみたい」  私たちはひそひそと声をひそめながら話す。
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