3話 道真公との出会い

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『ここだ』  ええっ! ……ここって何処だよ?  俺はそう思いながら声が聞こえてくる場所、すなわち道真公が触れていた大きな梅の木を見る。 「お、俺? ってか、う、梅の木が喋って?」  めっさ驚く俺。 『お前、そのままだと消滅してしまうぞ?』  そんな俺の驚きにも動じず、淡々(たんたん)と語りかけて来る梅の木……。  ま、まあ……梅の木だからかな? 梅の木が喋っている超常現象はさておいて……。  俺は慌てて自分の体を見る……と、た、確かにさっきより若干薄くなっている? 「え? ど、どうして? それに一体どうすれば?」  俺はワラをもすがる気持ちで、喋る梅の木に懇願(こんがん)する。 『理由は先程の姫と違いお前には実体が無いからだ。とりあえず、長話してる暇は無い。お前消滅したくないなら私と同化しろ』 「分かったよ。その代わりにあの牛車を追いかけるのが条件だぞ?」  何故、梅にそんな話をしたのか自分でも分からない。  でも、何故かその時、飛梅伝説が俺の脳裏を横切りピンと来たんだ。 『願ってもない。私も道真公の護衛が目的だ。お前もあの女の護衛が目的なんだろう?』 「ああ……話が早いな」  俺は素直に梅に重なる。  すると不思議な事に、俺は梅の枝を……いや、梅の木自体を動かせる様になっていた! 『体の主導権はお前に任せる。お前のイメージ通りの形状に変化しよう』 「お前はよせ。俺は、俺の名は龍之介だ。それにお前の名は?」  俺はその時、自分の言葉にハッとする。  そうだ! 俺は亜子を道真公を守る、龍となろう……。 『なるほど、龍之介だから龍か……心得た』   その瞬間、太い幹は胴体に、太いの枝は手足に、小枝はまとまり翼へと変化していった。 『契約は成った。私は亜子と道真公を救うために実体を持つ龍となろう。なお私に名は無い』 「そうか、名前が無いと呼びづらいから、お前はそうだな……飛梅と呼ぼうか。これからもよろしくな」  巨大な木龍となった俺と飛梅……。  その静かな咆哮(ほうこう)が青空に静かに響き渡る……。  その空気振動の為か、屋敷の周囲に植わっている木々の枝も千切れんばかりに激しく揺れていたりする。  ……木龍となった俺は……いや俺達は、所狭しと青空を自由に優雅に飛び回る。  遥か……遥か上空に昇り、白い雲を突き抜け……緑が生い茂る山々を駆け巡けて行く……飛梅と共に護衛の旅に出る為に……。  俺はふと考える……この実体を持った姿で道真公達の前に出るのはとてもマズイと。  ……だってさあ、あの龍だぜ?   まるで山のような巨躯に、生半可な武器を通さない固い鱗に覆われた体。その体でタイプや属性で異なるが、様々な属性の凄まじいブレスを吐き、暴れ回る龍……。  その姿は、ある時はゲームのボスキャラとして……ある時は神の使いとして……ある時は最強の相棒として……などなど。  そんな感じで、昔話やファンタジー世界で通常強キャラ設定されている龍……。  まあ、日本では「恵みの雨をもたらす水神としてのイメージが強い」けど。  その龍が目の前に突然現れると、どうなるだろうか……?  当然みんな驚いちゃうだろうし……なあ?  それに飛梅に聞いた話では、「力を使うたびに、飛梅の体が代償として縮んでしまう」らしい。  ということで、ここぞというところで影から助ける黒子的な役割を俺達はしていくことに。  道真公達は亜子や護衛と共に、関西である京都から九州の福岡にある太宰府を目指していく。   現在では文明が発達した関係で、新幹線や他の移動手段含め3時間程度あればいける距離だけど……。  飛行機経由だと当然もっと早い、が……今いる俺達の時代は平安時代……。  鳴くようぐいす平安京時代だ! 大昔に当然そんなものはない!  移動は陸路だと牛車や徒歩……水上だと船一択なのだ……。  なので、当然【数年がかりの命がけの旅路】となってしまうワケで……。  大昔だと海路での旅路は遣唐使の廃止にもなっているので、その危険性はお察しレベルである。  ……そんな長く険しい、陸路からの船旅……。  道真公や亜子の乗っている船が嵐で転覆しそうになった時は、迷わず助けたけれども……。  亜子が俺達の姿を見て悲鳴を上げ失神した痛々しい記憶が忘れられない。  不幸中の幸い、俺達の姿を見たのは亜子だけで、何とか事なきをを得た。  しかも、その道中では藤原時平の刺客が度々襲い掛かってくる始末。  道真公が引き連れた屈強な護衛達はなんとか、それらを撃退していくが……。  時原の息のかかった刺客が、ゲリラ的な戦いで五月雨式で襲ってくるため、その護衛も一人、また一人と命を落としていく。  戦いは熾烈を極め、道真公が危なかった時、俺と飛梅は遂に水中から援護してその刺客を追い払う。 「河童が助けてくれた」と道真公と護衛達は語っているが、実はコレ木の枝に水草で覆った作った体だったりする。   どの経路を通ったかは、飛梅の言われるがまま、飛行して俺は正直わからないし覚えていない。  こうして、長い長い……数年間……色々あったけど、何とか無事に太宰府の屋敷に到着する道真公一行。
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