プロローグ

1/1
前へ
/18ページ
次へ

プロローグ

 俺は、生まれた時から研究所にいた。  どうして、そこで育つことになったかはわからない。  俺は、研究材料であるがために、名前がないという話があったが、当時の俺は納得できなかったけど、大人たちに反発できるほどの勇気も、力もなかった。  体の大きい大人に叶わないことは、一目瞭然だから。  そして、俺の髪は生まれた時から切ったことがないために長かった。 「この個体は、使い方がわかっていないようです」 「では、明日から能力を引き出せるようにしよう」  俺は、その時は自分の個室にいた。  この個体って、誰のことを言っているのかわからなかった。  なぜなら、この研究所にいる子供たちは、みんな名前がない。  どうして、名前がつけられないのかわからないけど、俺は心底「名前くらい、つけてあげてもいいのに」と思っていた。  次の日になれば、白衣を着た一人の男性に俺は呼び出された。 「何でしょうか?」  俺は、おそるおそる聞いてみた。 「君は、自分の能力を自覚しているか?」  唐突な質問で、俺は動揺を隠しきれなかった。  今まで、こんなことを聞かれることがなかったから。 「自覚・・・・していないです」 「そうか。 調べたところ、君は何かしろの属性を持っているようだが」 「・・・属性?」  俺は、何のことだかさっぱりわからなかった。    生まれた時から、研究所の個室の中に閉じ込められて、体を調べれるだけの日々の中で、自分自身のこともわかってすらいないのに、何の説明もなしに、能力のことを言われても、頭の中はクエスチョンマークでしかなかった。 「君は、特殊な力を持っているんだ。 だから、能力を引き出せるように頑張っていこう」 「はい・・・・?」  俺は意味もわからず、返事をした。  俺は、白い個室に戻る戻ることになった。  白い個室には、白いベッドがある。  本棚はあるけど、娯楽みたいなものはなくて、ぜんぶ勉強に必要な本だけだった。  俺は、勉強というものを強いられてきたせいか、この年齢の子にしてみては、学力が高い方だと思う。  すでに、ひらがなやカタカナの読み書き、漢字もできていた。  その子供たちは様々な年齢もいたし、中には年齢がわからない子もいた。  子供たちは、研究所にいる時から髪を切ってもらえないために、髪の毛はみんな長かった。  髪の色は、ピンク、水色、青、黄色、オレンジ、赤、白、銀、栗色、紫、緑などたくさんの髪の色がいて、黒髪が珍しいくらいだった。  髪を切らないのか、切れないのかわからないけど、とにかく切らしてもらえなかった。  ある時、研究員に呼び出された。  白衣を着た人同士が会話していた。 「おかしいですね」 「やっぱり、勘違いだったんじゃないですか?」 「そんなことはないはずなのですが・・・・」  研究員が、言葉を濁していた。  研究員たちが集まり、俺の体を調べていた。   「やはり、波動を感じますね。 もしかしたら、奥の潜在的な部分で眠っているのかもしれません。 そこは、何としてでも引き出さなくてはなりません」 「ですが、そんな簡単に引き出せるのですか? 呪文とかも唱えられないみたいですし」 「たしかに、この子の詳しい情報がないんですね」 「ということは・・・・?」 「我ら、研究所でも、この子には未知な部分が存在します」 「となると、自然的な方法で能力を引き出すことは、厳しい見込みですか?」 「厳しいってことは本来ならないかもしれませんが、正しい呪文もわからない、本人が能力を自覚していないとなりますと、そのような結果になります」 「そうか。 なら、無理やりにでも、能力を引き出せるようにするしかないな」  俺は、大人たちの会話を聞いていたけれど、何のことを言われているのかよくわからなかった。  幼い俺には、難しい内容でしかないのか、俺の方に研究所内での情報が共有されていないから、よくわからないのか。  だけど、どうしてなのかはわからないけど、いやな予感しかしなかった。 「おめでとう」  研究員の人に、喜ばれた?  幼い俺は、状況が把握できずにいた。 「これから、君は、外の世界に出ることを許可されるようになったんだ。 これかは、戦うか、普通の人たちと同じように幼稚園に行くか、どちらがいいかい?」 「戦うって、痛いのが待っているのはいや。 だから、幼稚園の方がいいです」  その時の俺は、後先のことなんて、あまり深くは考えてなかった。  とにかく、今のこの状況から、抜け出せるのなら何でもよかった。  後から、わかったことがあった。  俺のまわりにいるだけで、人が死んでいく・・・。  俺のいる場所には、必ずと言っていいほど、殺人事件、自殺、事故死など、死に関わる事件が起こる。  それが、死に寄せ。  研究所にいた頃も、研究員が何人か死んでいったと、スクイアットロから聞かされた。  今日は、俺の両親が事故により、亡くなった。  それで、俺は児童養護施設に入所することになったのだけど、そこでも誰かしろが死んでいくんだな、と想像ができる。  この、死に寄せの魔力が消えない限りは・・・。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加