2人が本棚に入れています
本棚に追加
冷蔵庫をのぞく。ベーコン、玉ねぎ、ジャガイモ、ピーマン、手羽中、キャベツ、豚バラスライス、牛豚合挽き肉、長ネギ、豆腐、こんにゃく…
牛乳と卵の消費期限をチェックする。まだ、しばらくは持ちそうだ。
エコバックを持って車に乗り込む。慌てないように、忘れてるものはないか、メガネ、携帯、iPadは要るだろうか、レシピが見たい時にないと困るから、念のためエコバッグに入れていこう。
ラジコをつける。携帯を出して適当に今やっている局を再生する。いつもはTBSラジオだけれど、今日はなんだか知らないFM局にした。
パーソナリティが落ち着いたトーンで梅干しの話をしていた。口の中が酸っぱくなって、唾がでた。
赤信号で止まった。「ゲー、ゲー」となぜかカエルの鳴き声がした。この辺は田んぼも畑もない。首を振って周りの車をみたが、カエルを乗せているような車は見当たらない。
スーパーの駐車場に車を停める。隣が大きな黒い車で、よく見ると犬が留守番をしている。犬種はわからない。小さな室内犬だ。彼の鳴き声がカエルのように聞こえたのだろううか。いや、さっきはこの車はいなかったはずだ。
お留守番をしているのだろう。賢い犬だ。
カートを掴みカゴを乗せた。エコバッグを引っ掛ける。頭の中を整理しようと、冷蔵庫の中身を思い出し、何を買うべきか集中した。
急に頭にモヤがかかったようになり、とりあえず惣菜コーナーから何か買うべきものを物色した。
「あら、みゆきちゃんのお父さんじゃない。こんにちは。元気?」急に話しかけられてびっくりして顔を上げると、娘の同級生のお母さんがいた。
「こんにちは。元気ですよ。さっきもちょっとばかり、走ってきたんですよ」そういって腕を振ってランニングの真似をする。
「あら、やだ、もうだいぶん暑いでしょう、熱中症とか大丈夫ですか?」
この同級生の名前なんだったっけ。ああ、思い出せない。お母さんの名前も思い出せない。そもそも知らないのかもしれない。
熱中症も大事だが、名前が知りたいのだ。
「水のペットボトル持ちながら、走ってるんですよ、一瞬で汗だくです」
笑顔をむけた。
「いいですねえ、健康的で。ウチの旦那なんて休みの日でも、何にもせずに家でゴロゴロしてばっかりで、家のことなんてまるでまるで」
「いやいや、ゆっくりできる家庭を作っている奥さんが偉いんですわ」
最初のコメントを投稿しよう!