グーチョキパーで何作ろう

2/5
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 意味不明なお世辞に、俺自身気持ち悪くなった。 「あら、やだ、そんないいもんじゃないですよ。でも、みゆきちゃんの父さんは偉いですね。買い物ですか?」 「そうなんですよ、晩御飯がねえ…」  晩御飯を何にするか決めてない。ヒントをくれ。 「そうなんですよねえ、毎日毎日じゃないですか、こっちは。悩みますよねえ」ぷっくりしたほっぺたに頬杖をつく。奥さん、髪切った?  カゴの中をチラッと見る。ジロジロ見ると失礼だから。  白ネギ、豆腐、何かしらの肉、バラ肉っぽい。アイスコーヒーのボトル、ほうれん草、あとはわからない。 「暑いからやっぱり、冷やし中華ですかね」  俺は口から出まかせを言ってみた。 「そうねえ、それがいいんだけど、昨日も作ったのよねえ。連日冷やし中華だとさすがにねえ…」   じゃあ何か、あんた『すき焼き』か何か作る気か?豪勢だな。 「カレー肉が安かったから、カレーでもいいんじゃない。みんなカレー好きでしょ。じゃあまた、みゆきちゃんによろしく、さようなら」  何かを思い出したかのように、彼女は俺の前から消えた。何か買い忘れたものを思い出したのかもしれない。  俺は吸い寄せられるように、肉コーナーのカレー肉が置いてあるところに来てしまった。牛のところ、2センチ角に、何かの部位が切られている。国産とオーストラリア産がある。やはりオーストラリア産の方が2割ぐらい安い。  ビーフカレー。ルーはあったはずだけれど、カレーを食べたいかと、自問自答する。ポーク、チキン、カレーに入れる肉はなんでもいいように思う。    それよりもあの奥さんの娘・同級生の名前が思い出せず、しばらく立ち止まって考えてみる。携帯に入ってないかな、入ってないな。でも、バレないでよかった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!