母の失踪

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…気がついたら、雨に打たれ、暗闇の中で座り込んでいた。  …いったい何が起きた?… 雨が冷たくて、体の芯まで冷えていく。 ふいに雨が遮られた。 「大丈夫ですか?」 声の方を見上げたら、女の子がこちらを向いて立っていた。 女の子の上には真っ赤な傘。 年は僕と同じくらいだろうか。 僕を心配そうに覗き込むたび、柔らかそうな髪が肩からサラサラと落ちた。 『雨に濡れるから中に入って』 胸の中で鈴のような声がした。 僕は女の子と一緒に、僕の家に戻って行った。
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