【空】始まりの夜

3/6
前へ
/27ページ
次へ
その人は、濡れた芝の上で片膝を立てて座り込んでいた。 全身ずぶ濡れ。 うなだれていて髪で顔が見えない。 濡れた前髪から雨が滴れていた。 白シャツに黒いズボン。 白シャツが濡れて素肌が透けて見えそう…。 …って不審者!? 後ずさって固まった。 でも…。 …もしもこの人が殺人犯だとして、今ここで殺されたって、私は…。 その人の頭の上に傘を掲げた。 「大丈夫ですか?」 …私がいなくなったって、悲しむ人なんていない…。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加