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取説は大切に保管しましょう
惚れ薬の効果は本物だった。あれからユミちゃん達以外でも試した所、幸せなカップルが数多く誕生した。わたしってば恋のキューピッド♡
薬は残り一人分になっており、勿論これは馨くんに使うと決めている。
わたしはゲームをエサにして馨くんを自室に招くと、冷たい麦茶の中に惚れ薬を混入する。ショッキングピンクがなかなか麦茶の茶色と混ざってくれなくて焦ってしまったことは秘密よ。
「はい、どーぞ♡」
「ん、サンキュ」
「はぁ~、麦茶を飲んでる馨くんかっこいい! すきっ!」
「麦茶飲んでる所がかっこいいとか謎過ぎるんだけど?」
ごくごくと喉を鳴らして麦茶を飲み干した馨くん。わたしはドキドキしながら彼の名前を呼ぶ。
「か、馨くん!」
「なに?」
馨くんが、わたしを見る。あぁ、これでわたしたちは両思いなのね!
「馨くん、すき! 大好き、愛してる!!」
いつものようにわたしが愛を告げると、馨くんは──
「あー、はいはい。分かった分かった。ほら、早くゲームしようよ。コントローラ持って」
通★常★運★転!! え? な、何で?? あれれれれ~??
惚れ薬が効いていない? こんなこと今までなかったのに、どうして?? と、取説! 取説はどこ?? 取説は直ぐに捨てる派なのでもうないと思うけど!
「なに? どーかした?」
「え? あ、何でもないよ??」
「ふーん」
様子のおかしいわたしを馨くんが怪しんでいる……。
あぁあぁ、何で一番効果を発揮してほしい時に不発なのよぉおぉ~。誰? おくすりに頼ろうとか言い出したヤツ!!
「……今日体調悪い? 顔真っ青じゃん」
「体調が……悪いってわけじゃないけど、」
お小遣い半年分が何の意味もなさなかったのだ、顔だって青くなる。
そんなわたしに、馨くんは素っ気なく言う。
「ゲームはやめて寝とけば? ……オレ、アスナが起きるまでずっと傍にいるからさ。それなら寂しくないだろ?」
……ああ、やっぱりわたしは馨くんのことが大好きだな。
だっていつもいつもわたしに優しいんだもん! すきすきっ! ちゅっ!
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