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わたしはその言葉を待っていた。おばあちゃんに聞いてほしかった。
「お母さんがわたしの小説を勝手に読んだのよ。それで一言、こんな夢物語を書いていても一円にもならないわよ。こんな物捨てて正社員になるのよと言われて悔しかった」
おばあちゃんは言葉を挟まず頷き聞いてくれている。
「だって、わたし本気で小説書いてるし、それに正社員じゃないけど仕事も真面目にしてるのに‥‥‥こんな物って言われて」
わたしは、ふぅーと息を吐き再度話し始めた。
「それでわたしの小説ってこんな物なのかな? と思ってごみ箱に捨てたんだよ」
ごみ箱に捨てた原稿用紙を思い出し涙が出そうになった。
あの子が消えてしまう。お母さんにあの子を否定された。そうわたしの大切にしてきた全てを‥‥‥。
その時。わたしの隣で茄子の味噌炒めをパクパク食べている女の子が視界に入った。
わたしはこの女の子を知っている。だって、この女の子は‥‥‥。
じっと、女の子を眺めていると女の子は顔を上げた。そして、「わたしのこと思い出してくれた?」と言った。
「ねえ、まりなちゃん、思い出してくれた?」と女の子はもう一度言った。
女の子はお箸をお皿に置きポケットからペロペロキャンディーを取り出したかと思うとペロペロ舐めた。
「まりなちゃんどうしたの?」
おばあちゃんの心配そうな声が聞こえてきた。
「あ、ごめん」とわたしは謝った。
「あの子穂都子は昔マンガを描いていたのよ」
おばあちゃんは目を細めて言った。遠い過去を思い出しているのだろう。
「えっ! お母さんが?」
「そうよ。でも、こんなもの描いていても意味がないってスパッと放り投げたのよ」
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