ペロペロキャンディーとわたしとあの子の夢

4/13
前へ
/13ページ
次へ
 女の子の大きな目がわたしをじっと見ている。大人のわたしに中学生の知り合いなんていない。誰かとわたしを見間違えているのだろうか? 「まりなちゃん、またわたしのことを忘れたの?」  でもこの女の子はわたしのことをまりなちゃんと呼んでいる。だけど、知らない子だ。 「あの、わたしと誰かを見間違えているんじゃないかな? それと、一言言わせてもらうけどあなた不法侵入だよ」 「まりなちゃんってば酷いこと言うんだから」  女の子はそう言いながらわたしの隣にちょこんと座った。 「ちょっとどうして勝手に座るのよ」  わたしは視線を女の子に向けてちょっと強めの口調で言った。よく見るとどこかで見たことがあるような気がしてきた。 「まりなちゃんにわたしのことを思い出してもらいたいな」  女の子はペロペロキャンディーを舐めながらこちらを向いた。  やっぱり知らない子だ。けれどなんだか懐かしさを感じた。この子は一体誰なのだろうか?  わたしは思わず女の子をじっと眺めてしまった。女の子も視線を逸らさずわたしを見ている。  ねえ、あなたは誰ですか? わたしは何か大切なことを忘れている気がしてきた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加