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わたしは果たして何を忘れているのかな? 女の子の顔をじっと眺めながら考えていたその時、
「まりなちゃん。おばあちゃんやっぱり買い物に行ってくるわね。スイカはテーブルの上に置いてあるから食べてね」
おばあちゃんの声が部屋の奥から聞こえてきた。
「は~い、おばあちゃんありがとう」
おばあちゃんの料理だったらなんでも嬉しいのになと思いながら返事をする。
でも、スイカはやっぱり嬉しくてわたしの口元が緩む。
「わ~い! スイカだ~」
「はぁ? どうしてあなたが喜ぶのよ」
「どうしてって? だってわたしスイカ好きなんだもん」
女の子は得意げに胸を張っているのだから信じられない。
さらに信じられないことに女の子は、靴を脱ぎとてとてと居間へ向かったかと思うと、スイカの盛られたお皿をニンマリ顔で持ちとてとてと縁側に戻ってきた。
「まりなちゃん、スイカ食べよう」
女の子はちょこんとわたしの隣に腰を掛けお皿に盛られたカットしてあるスイカを置いた。
「スイカ美味しそうだね」
女の子はペロペロキャンディーをお皿に置きその代わりにスイカを手に取ると大きな口を開けがぶっとかぶりついた。
「う~ん、美味しいよ。まりなちゃんも食べたら」
女の子はまるで自分のスイカを分けてあげるよという感じでスイカを指差しそれからわたしの顔を見てにこっと笑う。
「わたしもスイカ食べよっと」
わたしは、スイカに手を伸ばした。
口に運ぶと冷えたスイカは甘くてそして、夏の味がした。
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