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わたしと女の子はしばらくの間無言でスイカを食べた。
見知らぬ女の子とスイカを食べているのになんだか懐かしさを感じ、今まで忘れていた気持ちがぐぐっと込み上げてきた。それがなんなのかわからないけれど。
「わたしまりなちゃんとスイカを食べられて幸せだよ」
「うん。そっか‥‥‥」
もうこの女の子が不法侵入者でもなんだっていいかなと思えてきた。
「ねえ、まりなちゃんの夢は何?」
女の子はスイカの種をぷぅーと庭に飛ばしながら聞いてきた。
「夢?」
「うん、まりなちゃんの一番好きなことって何かな?」
「好きなこと‥‥‥」
わたしは少し考えてから「小説かな」と答えた。
「そっか、やっぱりまりなちゃんは小説が好きなんだね」
女の子はわたしの顔を見て満面の笑みを浮かべた。その目はその答えを聞けて嬉しいよと言っているかのようだった。
「うん、ご飯を食べるのも忘れるくらい好きだよ。でも‥‥‥」
そう好きでこれしかないくらい好きなのに‥‥‥。嫌なことがあった。だからわたしはおばあちゃんに会いにきたのだった。
おばあちゃんの笑顔を見て元気になりたかった。それと、この家で‥‥‥。それは何だったかな?
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