優しい会話

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 そう言えば、私は後藤君とファストフード店にいたのだった。辺りを観察しすぎて、すっかり後藤君の存在も、自分が今いる場所も忘れていた。 「喧嘩について」 「喧嘩?」  私がこくりと頷くと、後藤君が早速ドリンクのストローを口に咥える。それから辺りを見渡して、可笑しそうに小さく笑った。  後藤君は、最近できた彼氏だ。新型コロナウイルスが流行っている中で、彼氏を作るのはどうかと自分でも思ったが、後藤君に告白されて、特に振る理由も無いから付き合うことになった。後藤君のことは、特に好きではないけれど、一緒にいて安心する。どちらかと言うと、大袈裟に言えば後藤君は結婚相手に最適な人間なんだと思う。恋愛についてはよく分からないけれど、人々は恋愛と結婚は違うと言っているし、これがきっとそうなのだろう。 「海上さんって面白いよね」 「そうかな?」 「うん、俺はそういう所、好きだよ」  私が口に運ぼうとしていたポテトをポロリと落とすと、それを見て後藤君がまた顔を覗き込む。 「どうかした?」 「……後藤君が急にそんなこと言うから」 「ああ、ごめん」  後藤君はへらっと笑みを浮かべると、私は膝上に落ちたポテトを摘まみ、口に運ぶ。  後藤君とは、今のところ喧嘩はしたことが無い。カップル同士なら、それは関係が良好だからと思っていいと思うけれど、お互いに興味が無いからという理由にも取れる。そもそも、後藤君は私のことを好きなのかも分からない。好き、とは言ってくれるし、告白もしてくれたからそうだとは思うけれど、今まで後藤君と接点が無かった分、不安になる。 「海上さんって、たまにじっと周りを見て、何か考えてるよね」 「ああ、癖で」 「喧嘩について、どういうこと考えてたの?」 「……特に面白くないんだけど」 「聞きたい」
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