優しい会話

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 私はドリンクのストローから口を離すと、そっとテーブルの上に置く。感染防止の為、すぐにマスクを付け、口を開いた。 「さっき、2組のカップルが喧嘩して別れたの」 「それは大変だ」 「だからどうして喧嘩するのかなって思って。喧嘩って、起こる理由としては2つ挙げられると思うの。一つは、他人を比較すること。他人と比較することで、比較された人は不快な思いになる。それで、喧嘩に発展してしまう」 「確かに比較されるのは嫌だね」  私がこくりと頷くと、後藤君がポテトを口に放り込み、ドリンクで胃に流し込んだ。 「もう一つは、強要」 「ああ」  後藤君は、ポテトを食べながら何度も深く頷くと、「嫌だね」ときっぱり言う。私もこくりと頷いた。 「強要することで、相手を不快にさせる。それに、相手を責めてしまったら、さらに不快な気持ちは膨れ上がる。よって、それが発展して喧嘩になる。さっきの2組は、この2つの理由で別れた」 「あちゃー」  私はマスクを下ろしてポテトをバーベキューソースに付けて、口に運ぶともぐもぐと口を動かす。その姿をじっと後藤君が見てくるから、つい視線を反らしてしまった。 「何か付いてる?」 「いや、俺たちは喧嘩しないなぁって思って」 「出来るなら、したくはない」 「うん、俺も。疲れるしね」  私はこくりと頷くと、今度はハンバーガーのラッピングを開いて、かぶりつく。温かいチーズと、肉厚なお肉の組み合わせが最高だ。そこに酸味のあるピクルスとケチャップが重なって、美味しい。 「海上さんって、俺のこと好きじゃ無いでしょ?」 「え……?」 「あ、やっぱりそうなんだ」  後藤君がへらっと笑うと、私は何て返せばいいのか分からず、あちこちに視線を巡らす。それを見て、後藤君が優しく笑った。 「ごめんって思ってる?」 「……うん」 「いいよ、別に。これから好きになってもらうつもりだし」
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