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後藤君もハンバーガーのラッピングを開くと、私と同じチーズバーガーにかぶりつく。私と目が合って、優しく微笑むと「美味しいね」と言った。私もこくりと頷くと、しばらくハンバーガーを胃に溜めていった。
「じゃあ、今度は仲直りについて考えてみようよ」
「仲直り?」
私は唐突に言った後藤君の言葉にきょとんとすると、ハンバーガーのラッピングを綺麗に畳んで小さくする後藤君を見る。後藤君はこくりと頷くと、トレーの端にそっと置いた。
「喧嘩のことだけじゃなくて、仲直りのことも。海上さんは、喧嘩した後の仲直りってどう思う?」
「……私は、仲直りしても完全にその関係は修復されたとは言えないと思う。どこかしら、関係はやっぱり脆くなっていて、傷ついている。だから次に喧嘩した時に悪化しやすい」
「それは一理あるね」
「後藤君は? どう思うの?」
「んー、俺の場合、けっこう歪んでるんだけど。仲直りは一種の逃げだと思うんだよね」
「逃げ、かぁ……」
「あ、俺の考えだから別に分かろうとしなくていいからね?」
私もハンバーガーを食べ終えると、ハンバーガーのラッピングを綺麗に畳んでトレーの上にそっと置く。それからナプキンで手と口周りを拭き、マスクを付けた。
「でも、何となく分かるかも」
「そう?」
「うん。そこまで激しく同意はしないけど、軽く」
「初めてだよ、俺の考え、けっこう歪んでるし、変わってるから」
後藤君は目を丸くして、それからへらっと笑うと、私もマスク越しで笑みを浮かべた。
「たまにはいいね、こういう会話も。彼女とこんな会話するの、俺らしかいないんじゃないかな?」
「けっこうレアケースだと思う」
「俺もそう思う。今度は試しに喧嘩してみる?ってなる気がする」
「試しに喧嘩してみる?」
「止めてよ。俺は出来るなら、したくはない」
「うん、私も」
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