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私たちが優しく微笑み合うと、私はふと窓の外を見た。辺りにはマスクを付けた人で溢れていて、その光景に慣れてしまっている自分を怖いとも思っていたりする。この謎のウイルスの脅威はいつになったら、消え去るのだろうか。2年後? それとも3年後? ワクチンが完成した。でもそれも実際に効果があるかどうかは分からない。しばらくはこのニューノーマルの日々が続く気がする。私が大学生になるまでには、感染は収束してほしいけれど、それは難しい気もしてきた。
感染者は、日を重ねるごとに増えているし、昨日は新規感染者が初めて300人を超えた。そんな中ファストフードで彼氏とデートをするのもどうかと思うが。オンラインデートを今度提案してみようかな。それはそれで、面白い気がする。
「マスクばっかりだね」
「流行ってるからね。ねぇ、今度はオンラインデートをしてみない?」
「オンラインデート?」
「うん。オンライン飲み会みたいな」
「楽しそう。いいね、それなら外に出なくて済むしね」
「うん」
私たちは立ち上がると、ゴミ箱にゴミを捨てて、手を洗う。それから消毒液で除菌をすると、外に出た。
こういう会話を重ねれば、少しでも世界は優しくなるのだろうか。そうだといいな。
「後藤君」と私は隣を歩く彼を呼び止める。彼は首を傾げて「ん?」と聞いてきた。サラサラな前髪が少し目にかかる。
「私、まだ後藤君のことちゃんと好きじゃないけど、この先絶対に好きになるから」
「無理しなくていいよ。別に無理して好きになるのは望んでないし。海上さんが辛くなるだけだし」
彼が優しく微笑む。私もつられて微笑んだ。「ありがと」と小さな声で言う。
「後藤君、これからも宜しくお願いします」
「こちらこそ、これからも宜しく海上さん」
彼がニッと微笑んだ。私は少し照れくさくなって、俯きながら微笑む。
後藤君の隣にいると、世界が優しくなった気がする。そういう彼を好きになれたらいいな。ゆっくり、時間が赴くままに。
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